Alex Henry Foster: 要注目アーティストへインタビュー

掲載:Le Collectif

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音楽への情熱を持つようになったきっかけは何ですか?

僕の音楽、文学とアートへの情熱は、絶対に両親の影響だね。幼少期と青年期のほとんどの間、僕の両親は経済的に不安定で、常に生き延びるために葛藤していたけれど、それを超えて、目の前に良いかたちで広がっている現実を僕に発見させるために、何でもしてくれた。

ほんの一瞬住むことができるようになった、間に合わせの小さなアパートのスペースを埋めるように、常に音楽がかかっていたんだ。音楽のない日なんか覚えていないよ。

僕が父と過ごした最も親密な思い出の一つは、僕をソファに座らせて、父が自分の好きなThe Rolling Stones, Led Zeppelin, Neil Young, Creedence Clearwater Revival, Pink FloydやBlack Sabbathについてシェアしてくれた時のこと。そのレコードに魅了されたのを今でも覚えているよ。とても脆く見えるけれど、そのグルーヴに思いも寄らない力が隠されてるんだ。僕の知識と想像を育ててくれたユニークな詩の叫び。

僕の母は、今でいう昔ながらのロックンロールが好きで、毎週土曜日の朝はElvis, Jerry Lee Lewis, Buddy Holly, Chuck Berry, Little Richardなど、母の子供の頃のヒーローたちの曲のリズムに合わせて僕にダンスをさせたんだ。それがどれくらい僕にとって、良いことだったか当時は理解していなかった。でも、あの歳じゃ、悲しい存在ってのが、貧困と向き合わなきゃいけないことから生じる不安や恐怖の苦痛だと認識していなかったんだ。それよりも、あらゆる音楽の形を剥き出しにした毎日だった。

音楽が本格的に僕の人生に関わってきたのは、友人のお兄さんのバンドのリハーサルを見たときからだと思う。僕は小学5年生だった…本物の楽器を演奏している人たちを見た感動を僕は一生忘れないだろう。ある秋の午後、僕の耳に届くカオスはコーディネートされ、そこに大きなパワーを感じたんだ。それがきっかけで、The Cure, The Clash, Bauhaus, Siouxsie and the Banshees, The Smiths, Joy Divisionなどのバンドを知った。僕は完全に催眠にかかったようだったよ。この経験がその後の人生を変えたんだ…

それに続いて、僕はSex Pistols, The Ramones, The StoogesやThe Crampsを知って、初めてのバンドを組んだりした。でも音楽が僕にとって単なるデシベル以上のものであり、より文学や音のテクスチャーに重きを置くようにさせてくれたのは、Fugazi, Sonic Youth, Nick CaveやLeonard Cohenを聴いてからだよ。彼らを知った後は、アーティスティックじゃないものには興味を持てなくなっていた…

本格的にアーティストとして活動するようになったきっかけは何ですか?

ハイスクール時代は、数えきれないほどのバンドに参加したけど、どれも真剣なものじゃなかった。本格的に活動するようになったのは、Sefと出会ったとき。Sefと一緒にYour Favorite Enemiesを結成したんだ。お互いソーシャルワークについて学んだこともあって、音楽を僕らの社会活動の軸として、また自分たちを表現するツールとして、さらに僕らのように感情的な孤独を打ち破りたいと思っている人たちを集める機会にできたらと思ったんだ。

人に手を差し伸べるっていうゴールから、全てが始まった。僕らが関わっていた人権団体のために慈善コンサートをいくつかやって、その後ユニークな冒険が始まり、僕らを世界中へと導いたよ。ただ自分たちの直感に従うっていう以外、特に計画もなくね!あったのは友情によって導かれ、他の多くの人とも繋がりたいという願いだけだった。

ソロとして歩み始める前、あなたはバンド”Your Favorite Enemies”のヴォーカルを務めていました。バンドとあなた自身の音楽にある違いは何ですか?

違いは、その曲が生まれた経緯から既に違うって言えるかな。Your Favorite Enemiesの曲は、いつだってメンバー内の深い友情からできたもので、僕らそれぞれが持つクリエイティビティを通して、一体となった乗り物が強い感情を表現しているっていう感じだった。この表現における純粋なエネルギーは、同じ感情、同じニーズ、同じ望みを抱いている人たち、またはそんな感情の存在を疑わない人たちとコミュニケーションを取るという唯一の目的のためだ…その全てを精神が浄化されるような解放を通して行っていたのさ。

一方で僕のプロジェクトは、父を追悼する気持ちから生まれたものだ。そういう個人的な問題を、バンドのサウンドや、”僕ら”っていう集団の一部になることでカモフラージュし、親密な感情と関わるのをずっと避けていた。だからこそ、僕の音楽はより内省的で、熟考的で、浸るっていう経験なんだと思う。言葉が正直に感情を伝えている音楽。フィルターも、恥も、策略もなく、音楽が僕らを新しい境地へと運んでくれるんだ。僕らを転覆させるために無理矢理、押し分けて進むんじゃなくて。

2016年から2年間モロッコへ行き、アルバム『Windows in the Sky』に取り組んだそうですが、この曲作りのインスピレーションは何でしたか?

僕は何よりもまず、自分のことを誰も知らない、街に目印となるものも、指標となるものもない場所へ行きたかった。肉体的にも、感情的にも、精神的にも完全に疲れ切っていたんだよね。唯一のゴールは漂うことだった。けど、タンジェという街が、身を任せて解放することの意味について教えてくれたんだ。この時から、作詞をする意欲が徐々に戻ってきて、自分には父を悼む時間が必要なんだと気付いた。僕を人として、アーティストとして特徴付けた多くの苦悩や嵐と和解したかったんだ。

ソロキャリアを積むことは、いつも考えていたことなんですか?この選択へと導いたものは何でしょうか?

キャリアについて野望を抱いたことはないよ…僕にとって、創作というかアート全般は、僕らが受け取る贈り物であり、そのお返しとして与えられる果実だと思ってる。もしもソロアルバムを製作することが選択だったのなら、むしろ、それは僕に必要なことだったからだ。バンドのラウドな音の影に隠れたり、生きてると感じるために2階のバルコニーから観客へと身を投げることなく、自分を表現する必要を感じたのさ…

何故、アルバムの先行公開を東京で開催したのですか?

日本を故郷のように感じているからさ。このアルバムは個人的なものであり、親密なものであるから、今現在の僕をありのまま見てくれるだけでなく、いつも愛情ともてなしの心で僕を迎えてくれた人たちの前で自分をさらけ出す必要を感じたんだ。このアルバムを彼らの前で紹介することができたら、他の場所でも公にする心の準備ができたって言えると分かっていた。

2017年に”A Journey Beyond Ourselves”のストーリーブックをリリースしました。そこでは、Your Favorite Enemiesのアルバム『Tokyo Sessions』について話しています。このアルバムの創作にまつわるストーリーを説明することが重要だと思った理由は何ですか?

『Tokyo Sessions』のおかげで、疑いや限界、絶え間なく続く評価から自由になれたんだ。『Tokyo Sessions』は、アルバム『Between Illness and Migration』を再解釈して再作曲したもの。このアルバムは、Juno賞にノミネートされ、ほぼ5年ほど世界中をツアーさせてくれたアルバムだ。そのツアーでの経験から、徐々に曲自身が独自の形へと変化し、僕らの間にあった距離について気づかせてくれた。この重要な時期をしっかり見て、その本質を何年も忠実にサポートしてくれた人たちと分かち合うことは僕にとって大事なことだったんだ。もしも、『Tokyo Sessions』がYour Favorite Enemies最後のアルバムになったとしても、僕らがやりたいことをまさに表現できたし、バンドを本当によく映し出している。だから、このアルバムが僕らに与えてくれた解放をお祝いし、僕らが持つ創作的自由を見てもらいたかったんだよ。

あなたはアートや音楽、また日々の出来事について、”The Eye View”と日本の”BEEAST”という2つのマガジンで執筆しています。シンガー、ミュージシャン、作家であるのに加え、あなたは詩人でもあります。どんなものにインスピレーションを受けて言葉を綴っていますか?

僕が自分という枠を超えて物事を観察する時間をとる時に感じるもの全てからインスピレーションを受けているよ。僕は愛情を込めて”他人”と呼ぶ人たちに、いつだって魅了されてきたんだ。その人の人生、その人の間違い、その人の矛盾、ナンセンス、優しさ、そして素直な残忍さにもね。その人たちの中に、自分が認めたくないものを見る。自分は違うと思いたいものを見る。僕は”その人”の中に全く美しいものを見たし、その人が苦しんでいるのを見て悲しくなる。そして、その同じ苦しみをまた別の人に与える人たちを見て怖くなる。僕はその人について、または自分について、全く何も知らなかったんだと気づくんだ。そうやって思いを巡らせることで、インスピレーションとなるんだよ…”他人”さ。その人も、また僕を見ているって思いながらね。

音楽的なキャリアにフォーカスする前、あなたはソーシャルワークに携わり、アムネスティ・インターナショナルのスポークスパーソンやスピーカー等として関わっていました。アーティストとしてのキャリアに社会的な関わりも持とうと思っていますか?

僕にとって、この2つは切っても切れない関係にある。社会的な含みを持たないアートというのは、いかなるアートでも存在しないと思うんだ。たとえ、無味乾燥な表現方法や創作でも、社会的含みはあると思ってる。それが世界で起きていることの反映だろうと、後者の落とし穴だろうと、アートはいつだって、そしてこれからも社会的だ。僕らは今、外見が全ての世界で生きているように感じる。すべてが偽りで、味気ないカルチャーの世界に。でもアートはそれでもなお、その中心にある。その社会的影響とともにね。アートは世界の反映であり、”人”の反映であり、それに相反するものだ。少なくとも、僕はそう考えているし、僕のプロジェクト全ての中心となっていることだよ。

今年あなたはL’ADISQの”最優秀英語歌詞アルバム”にノミネートされました。アルバムのセールス等の成功を目にして、このノミネーションを期待していましたか?

これは素晴らしいサプライズだったよ。でも授賞式とか認知とか、そういうものについてじゃなくてね。僕は何よりも、このアルバムを通して僕を受け入れてくれた人たちが誇りに思うだけでなく、自分のことのように喜んでくれるだろうと思って嬉しくなったんだ。だって、彼らはアルバムを伝える言葉とサウンドを超えて、彼らなりのアイデンティティをアルバムに与えてくれたから。自分のものにしてくれたんだ。このノミネーションを嬉しく思ったのは、そういう人たちのためだよ。

これまで作ってきた曲の中で、あなたのお気に入りはありますか?またその理由は?

これは難しい質問だな。その時の心の状態によって変わるから。今、この瞬間で言えば、「From the City to the Ocean」かな。というのも、この曲は目の前にはだかる距離の前で、自分に問いかけることについてだから。その距離は時間とともに渡ることができると信じているもので、歌詞はコントロールしなければ安心できない本質的なニーズへの視点から書かれている。全くそうする必要はないのにね。だって、モーション(動き)は、持ち堪えるよう言われた時こそ、手放す必要があるっていう決断の結果だから。

音楽的成功を実感したのはいつですか?ある時点で、予想できましたか?活動を始めた時、ミュージシャンとしての成功がゴールでしたか?

自分が望まなければ、何だって予想することなんてできないと思うな。そして、僕は創作について、成功とか失敗っていう概念を信じていない。けど、自分がその曲を作った理由を踏みにじられたと感じた時に、この世界の悪意を感じたよ。コンサートをたったの3回やっただけなのに、僕らの最初の(そして最後の!)マネジャーは、この執拗なエンターテイメントの世界における教訓も準備も何も教えないまま僕らを戦場へと出したんだ。そして、夢と希望を育んだ人たちの爪は、ただ所有するためだけにあった。お互いへの深い友情と愛が身を守っただけでなく、それこそ僕らが今でも一緒に続けている理由だって言えて誇りに思っているよ。もしも、僕らの冒険に成功という概念があるんだとしたら、それは僕らの間にある友情についてだね…

あなたはドイツでもライブをしました。今後、パフォーマンスの機会を世界に広げていく予定はありますか?あなたのルーツ(モントリオール)は、あなたにとって重要ですか?

『Windows in the Sky』を作った時、僕はステージに上がろうとは思っていなかったし、むしろそれを恐れていたんだ。こういう個人的な曲を毎晩、演奏する強さも力もないだろうと思っていた。僕らの友人であるLaurent Saunierがモントリオール国際ジャズフェスティバルで演奏するべきだとしつこいくらいに強く誘ってくれたからこそ、そして何よりも彼が僕のアルバムをすごく気に入ってくれたから、最終的に出演を決めた。だから、ヨーロッパと日本で最初に火がついたYour Favorite Enemiesとは違って、このプロジェクトは僕のルーツに繋がっていると言える。だから、11月30日にモントリオールのL’Astralで再びライブをしたいと思ったし、でも、ケベックでも、もしも機会があれば演奏したいなと思っているよ。もう既に、ヨーロッパ、アジアとアメリカでのライブがスケジュールに上がっていたとしてもね。

今後の予定は何ですか?あなたの未来をどう願えば良いでしょうか?

『Windows in the Sky』のデラックス・バージョンが来春にインターナショナル・リリースされる予定だよ。それと詩人のウィリアム・B・イェイツについての映画のサウンドトラックも作ったんだけど、それも2020年末に聴けるようになると思う。あと、僕の心に特に近いプロジェクトがあって、Your Favorite Enemiesの特別ボックスセットなんだけど、これも2020年1月31日にリリース予定さ。

僕の願いを言っても良いなら、君の新聞を通して分かち合わせてくれた僕の冒険が、記事を読む人にとって、自分の直感に従い、自らの運命を作っていくためのインスピレーションになったら良いなと思う。

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ARIEL BÉLANGER
2019年11月26日

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