Alex: “このアルバムは僕を解放へと導いてくれた”

掲載:Guitar World

原文はこちらから

Your Favorite Enemiesのフロントマンと、彼のデビューアルバム『Windows in the Sky』について話しました。

2016年に父親を癌で亡くしたあと、Alex Henry Fosterはメインプロジェクトだったカルト的な人気を誇るカナディアン・ロッカーYour Favourite Enemiesの活動を一旦休止して、モロッコはタンジェへと向かいました。カナダに戻る前、彼は前進バンドの仲間たちと初めてのソロアルバムをレコーディング。ポストロックとノイズロックがミックスされたカタルシス(心の浄化)は、バンドとしてそれまでやってきたものとは全く異なるものでした。

Your Favorite Enemiesは世界中をツアーしましたが、そのパンチの効いたオルタナティブロックはやはり本国カナダ国内で最も良く知られています。最新作品では、ショーゲイザーやポストロックの要素も加え、サウンドデザインに注目して、音に厚みを出しています。それでも、楽曲には計算された光沢があり、それはAlexの新しいプロジェクトへも解放されました。

Guitar Worldは、伝説的USノイズロッカー …And You Will Know Us By The Trail of Deadのサポートアクトとして、『Windows in the Sky』と共にヨーロッパツアー中だったAlex、そしてSef & Ben Lemelinの兄弟に話を聞きました。

まず、なぜタンジェだったんですか?アルバムはそこからどうやって生まれたのでしょう?

ただ作詞をしようと思って向かっただけなんだ。その後、2ヶ月の滞在が、結局はトータルで2年になった。まるでそこに住んでいるように感じていたとき、Ben [Lemelin] と話たんだ…そうして、自分たちでホームスタジオにした場所で制作に取り掛かり始めた。

プロツールはあったんだけど、それ以外はすごくミニマルなもののみ。だから、高性能なガジェットに頼ったり、僕らがプロフェッショナルなスタジオにリフォームした教会スタジオでいつもやっているよりも、よりクリエイティブになる必要があった。

アートが全てのスタジオだったんだ。だから、レコーディングしなければっていう自分の衝動に頼っていたところがあったよ。録音されるものが、その瞬間から生まれた正直なものであるようにしたかったんだ。だって、このアルバムは感情の非常事態についてだったから。

じゃあ、ほとんどライブ・レコーディングですか?カナダに戻ってから終わらせようとは思わなかった?

あとでスタジオに戻って、全てをやり直すっていう自分を信用できなくてね。

機材はどんなものを持っていましたか?おそらくアコースティックとエレキだと思いますが…

アコースティックギターだけじゃなかったよ。ミニマルと言っても、様々なレベルにおいてミニマルだったって感じ。ほとんどがライブでレコーディングされたんだけど、Your Favourite Enemiesでやっていたように、それをスタジオでオーバーダブするってのは嫌だったんだ。

自分たちのスタジオを持っていたばかりに、ものすごく細かい部分について、延々と取り組めたからね。かなりの時間をあーでもない、こーでもないと話したり、変えたりしても、結局ははじめのアイディアに戻るんだ。

作詞プロセスは、どう取り組みましたか?また、レコーディングのプロセスはどうでしたか?

このアルバムは、とてもパーソナルなものだったから、曲から曲への流れをスムーズにしたかったんだ。だから、アルバムの曲順と同じ順番でレコーディングしていったよ。感情的な旅っていうのかな…”アートステートメント”的なものは意識していなかった。本当にその瞬間のエッセンスを捉えることについてさ。

それでもアルバムの音の層は厚いですね。オーバーダブはなるべくせずに済ませたかったとの、ことでしたが、それについては?

それが最大のチャレンジだったと思う。だって、ずっとヘヴィーなギターサウンドがあるバンドで、割とダイレクトなアプローチをしてきたから、自分の直感を信じなきゃいけなかったんだ。どんなリフが良いかを見つけようとするんじゃなくてね。色々な細かい要素との間でバランスを見つけることについてだった。例えばキャンバスがあって、そこに色を全部載せていく。そうしてようやく、はっきりとした視点が得られるだろう。

そして、描いていくうちに、より鮮やかな色が見えてきて、やがてその周りにある様々なテクスチャーも見えてくる。それって直感だよね。だから、曲を聴くプロセスを通して、新しいギターや、トーンやアンプなどを加えていくことができたんだ。たとえ楽器機材が限られていたとしても、自分の聴きたいものに忠実になれたんだよ。ソニックステートメントみたいにするんじゃなくてね。

場所や機材の他に、このアルバムに影響を与えた何か新しいものはありますか?

僕が音楽にハマったきっかけを作ってくれたバンドに影響を受けたよ。Branca, Sonic Youth, 昔のSwansとか、クールなリフを見つけようとするよりも、感情を伝えるために、楽器をツールとして使い、よりテクスチャーを入れているバンドだね。

他のものよりも多く頼った楽器機材はありますか?

いくつかのギターかな。それは大事な部分だった。Jazzmasterを数本とEastwood4弦テナーギターを使って、テクスチャーの異なる音を加えていたよ。他の人がどうやってるかじゃなくて、僕としては、それぞれの楽器のバランスを見つけることが大事だった。

僕らが以前そうだったように、常に同じタイプの楽器を忠実に使っていると、”オーケー、僕らはFender Jazzmasterバンドだ”みたいな感じになる。それってステートメントだよね。このアルバムでは、ただ楽器を手に取り、他の楽器の音とどう補い合っているかにフォーカスしたんだ…こうするべきだって思うことよりも、自分の耳を信頼したよ。

そのサウンドデザインはどう表現されましたか?作曲のステージでは?レコーディングでは?ミキシングでは?その全部のステージでは?

ノイズの壁にならないように気をつけたよ。全部をただ加えるのは簡単だろう?全部10にして、エフェクターを踏めば、突如として世界のキングになったような気分になれる。けど特に何も起こらない。だから、それが大きなチャレンジだったんだ。だって、タンジェでは特に、小さいスペースで、しかもモスクが近くにあったから、1日に5回お祈りの放送が町中に響き渡るんだよ…滞在していた場所は人通りの多い角でもあったから、色々な生活音が聞こえたんだ。

そういう音も音楽に加えたいと思った。だからヘッドフォンで聞くと、時に、よく分からない小さな音が聞こえる。そういう音は僕らがいた環境の一部だったんだ。

それで、僕が全てを書き終えた時に、バンド仲間たちにも同じ環境にいて欲しいと思った。だから、ただパートを爆音でプレイするだけじゃなくて、ある意味、お互いの音を注意深く聴き合う時間も必要だったんだ。そうやって、様々な音の層を一つのサウンドにまとめることができた。

なるほど。自分が演奏している時に、どのように他のメンバーを指揮していますか?

Sef [Lemelin] は、色々なエフェクターの魔法使いだ。だからこそ、Sefにはテクニックに夢中になって欲しくなかった。それは僕にとって別なんだ。Sefには、なんとなく楽器やいつも彼が使っている機材を全部取り払って欲しかった。そういうファンキーなものに自分たちを見失わないためにね。

それは僕にとって解放的だったんだ…パフォーマンスというよりも曲についてだった。素晴らしい技術を持ったミュージシャンでも、人の心を動かせるとは限らない。何も感じないかもしれない。もちろん、速弾きが得意かもしれない。それは最高さ。でも、それに感動できるだろうか?ただ”Wow”って言う以外に?

アンプについてですが、どんなものを使っていましたか?

Sef Lemelin: A Fender Super ReverbとOrange Rocker 30, シンプルなコンボだ。

じゃあ、クラシックなクラブアンプですね?Marshallのスタックじゃないのも納得です。

Lemelin: 4×12、フルスタッフで使っていたら、きっと近隣から苦情が出ていただろうよ!

では、Alexのテナーギターはもちろんのこと、他には何が?

Foster: テナーギター、 [Eastwood] マンドスタング…

Lemelin: “[指でカウントしながら] A Troy Van Leuwen Jazzmaster、Duesenberg Starplayer TV…”

トレブルでテナーギターを使っていましたね。他にギターの音域を拡大したものは?

Lemelin: あぁ、Eastwood bass VIを使ったよ。こういうベースギターの良いところは、6弦と同じコードでプレイして、音がリッチに聴こえること。「The Hunter」のベースラインはbass VIだ。

良いですね。これまでとは違うプロジェクトだけに、いつもとは違うスケールやモードでプレイしたということはありますか?

Lemelin: もちろんだ。というのも、違うバンドでやっていた時のようなメジャー/マイナースケールでは、複雑な感情やコンセプトを描写できなかったから。不協和音的な音はたくさん使ったね。だって、リハーサルしていくうちにAlexはそういうのが好きだって気づいたから。でも、 [フリジアン] やドリアンも取り入れた。それは俺らとしては、サウンドトラックっぽい感じ。

最後の質問です。音楽の何が好きですか?

Foster: 自由かな。そこにある自由が好きなんだ。目に見えないものから何かを生み出し、さらに閃きをもって他人と分かち合えるものにしていき、それが自分を感動させ、人とのコミュニケーションを生むこと。

『Windows In The Sky』は、Hopeful Tragedy Recordsより5月1日に発売。現在は予約受付中。

ALEX LYNHAM
2020年4月8日

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