光が輝き続けるように

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ウェブロックマガジンBEEASTでのコラム連載より

2016年3月2日 – ニューヨーク

僕の人生では、シンプルなジェスチャーが深い意味を持つことが多いんだ。だから、Your Favorite Enemiesのベーシストであり、弟のような存在であるベンが、表紙にアーネスト・ヘミングウェイの言葉が刻まれたノートを僕にくれたとき、それがベンにとって特別な行いなんだって分かってた。僕がヘミングウェイのファンだってだけでなく、そこに刻まれた言葉にも意味があったんだ。自分が体験する様々な冒険に多くの人を招いて、最大限に楽しんでもらおうと努力する割には、僕自身がそうすることは稀だってのを、ベンは知っているからね。このノートに刻まれた言葉について想いを馳せながら、BEEASTマガジンでの初めてのコラムを書いてる。そして、僕が書く言葉をみんながどう受け取るかってよりも、自分が感じたままに書こうって思ってるよ。

最近はずっとスタジオに入って作業してるんだけど、先日ライブのためにニューヨークに行ったんだ…ニューヨークへ発つ数時間前、太陽が顔を出そうとしている薄暗い夜明けに、僕はこの言葉について何度も何度も考えていた:

“人生について言葉を綴るなら
まず生きなければならない”
– アーネスト・ヘミングウェイ

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今は午後5時過ぎ、ニューヨークにいる。昨晩は僕のバンドYour Favorite Enemiesが、有名なPianosでライブしたんだ。最高だったよ。純粋にすごく楽しかったし、思い切り解放できた。このライブほど、音楽が持つ目に見えないエッセンスを感じたことはない。音楽にはスピリチュアルな面があるんだ。それは触れられないし、説明できないし、想像することも、ポートレイトすることもできないけど、確かに感じる。真似したり、ごまかすなんて絶対に無理さ。ニューヨークでのライブはまさにそうだった…来てくれた人たちとの交流は、愛情という名の贈りもの。それぞれタイプの違う人たちが、同じ瞬間を一緒に経験していた。それは純粋で、完全無欠。もしも真実に色があるなら、その自由が持つ色合いが輝くのを、これまでにないくらい見た気がする。自分の人生で見てきた光よりもね。この夜の経験は、夢の街ニューヨークなんてもんじゃなかった。それは、説明できないものをコントロールしなきゃっていう幻想の終わり。自分で抑えがきくから、これはこうでなきゃっていう陰った物の見方の終わりだった。ニューヨークでのライブは、僕がずっと望んでいたもの、必要としていたもの全てだった。

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ここ数ヶ月は僕やバンドにとって、感情的にも肉体的にも激しかったんだ。僕らは本当に”Do-It-Yourself”なスタイルをとっていて、ソングライティングからアルバムレコーディング、ビデオ製作やグッズ製作、そして、ビジネスのことまで全てに関わっている。だから時間の感覚も曖昧なんだよね。時間ってのは、幻想と事実を弄ぶ皮肉な面を持っているよ。人生へのヴィジョンを、めまいや混乱を通して、ぼやけた感覚へと変えてしまう。長いこと、陽の光を見てない気がするんだ。別に悪夢から目覚めてないわけじゃないよ。でも時々、夜の震えは、遅い朝の別れに沈黙する恋人たちへの悩みの種になる。自分が立ち上がる高さは関係ないんだ。めまいは心と魂の問題にもなり得るんだよ。狼は月に向かって曖昧な散文を唸る。そして誰だって一度はその月から逃げ出そうとしたことがあるはずさ。ニューヨークへの旅は僕にとって恵みとなった。何度も逃げようとしてきた色を、再び描くための完璧なキャンバスだった。この先ずっと自分を失ったままになるかもって不安になることなく、全てを捧げきり、再び生まれ変わるための招待だった…あぁ、自分は人間なんだなって感じるための。

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ニューヨークへと向かうため、僕らが早朝にモントリオールを発った日は、霧がかった灰色の空の寂しい日だった。外の景色なんて、久しぶりに見た感じだったよ。ここ数週間は、最新アルバム『Between Illness and Migration』のデラックス・エディションに取り組んでいるんだ。曲の中にある鮮やかな感情が蘇り、とても個人的なものとなったアルバムを生んだ喜びと悲しみに直面し、もう会うことのない人々の顔を思い出し、自分の惨めさを隠していた声からボロボロだった自分の想いを聞き、暗闇にある偽物の安心に身を浸したときだけ明らかにしていた、無垢な感覚に光を当てていたんだ…海底に沈んでいきながら、平和に波打つ水面のキラキラした色を見ている溺れかけの魂の音。

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僕は後悔することに意味を見出さない。でも、もしも後悔していたなら、相当な数を乗り越えなきゃいけなかっただろうと思う。曲や歌詞のメランコリックなトーンが、忠実に戻って来る波のように僕を襲うんだ。まるで大嫌いな写真が詰まったフォトアルバムを見ているかのように。そして、気づくこと、認めることと言えば、どの写真も自分の心の中を映し出したものだってこと。残酷だけど、正確なんだよ。物語は書き直せるけど、人生は巻き戻せない。経験が人を成長させ、受け入れること、解放することで、心の奥にある恐れや最も暗い秘密から自由になれるんだ…目に見えない混乱が光り輝く色付きの雨となり、僕らの頭に優しく降り注ぐかのように。そうして、薄暗い道を通って家路へとつく足跡に恵みをもたらすんだ。『Between Illness and Migration』のデラックスバージョンに取り組む中でのテクニカルな面を除いて、こうして曲を振り返って、再度アプローチしているのは、正直な心があるから。それが、アーティスティックな旅の熱を生む。ラウドなアンプも、ヘヴィーなノイズも、こういう真実に嘘なんかつけない。アートってのは、アーティストの魂が経験する最も暗いシーズンや、最も明るいシーズンを通した旅についてなんだ。目に見えないものに触れる旅。形のないものを見る旅。もしも、理解し難い雄弁さと美しさがあるんだとしたら…それは時間を掴むこと。非永続性を愛すること。

バンドの海外ツアーを、いつだって好んできた。家があまり裕福じゃなかったから、子供の頃は旅をしたことがなかった。でも、色々と困難だった子供時代も、僕の想像力を使って最高の旅をすることができたよ。だから、旅行に関しては明るくてドリーミーな考えを保つことができたと思う。バンドと一緒に行った海外ツアーのどれも、自分のいる場所を素晴らしく映し出しているんだ。地理的にじゃなくて、僕の人生においてね。バンド仲間としても、個人としても、いま現在の僕という人間を映し出してる。グループに所属することの本質の中で成長してきたんだ。ニューヨークへ行くことが、僕にとって意味のある旅になるって分かってた。もう一度言うけど、それは音楽という域を越えるんだ。人でいること、触れられること、脆くなること、信じることの意味に浸るための招待なんだ。僕としては、いつだって信じる心と疑う心の間を揺れ動いてるんだよ。無感覚な僕の顔を優しく撫でる誰かの祭壇へと、自分の心に生まれる酷く恐ろしい囁きを手放そうとして、それができない度に、その思いを超越できる方法を探しているんだ。だからこそ、海外ツアーを早朝の逃亡として考えたことはない。自分の心を騙して身勝手な惨めさで盲目のスカイフォールになることもできたかもしれない、けど、笑顔のさよならを永遠の別れへと偽ったことはない。たとえ、何度も自分に言い聞かせた嘘になれたらと願っていたとしても、そうできないことに感謝してる。最も遠い距離の旅は、心の中だ。

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ニューヨークでのライブは、脆さと激しさが等しく生まれた心の旅だった。純粋な心と魂の状態が、ライブハウスPianosに、スローモーションの流れと、情熱を囁くデリケートなニュアンスを運んだんだ。それは、自由でいる感覚と、自由になる感覚の脆いバランスを通した感情的爆発の反映にしか開花しない情熱。少なくとも、僕はそう感じた。来てくれた人たちみんなから力をもらったよ。アーティスティックに壊れた夢、その名声で知られる、あのライブハウスにいた人たちにとって、それがどんな意味であろうとも、僕としては、稀に見る仲間意識、本物で、正直で、控えめで、ユニークな、心に沁みる神の愛、目に見えない力が後押ししてくれた無条件の解放を感じたんだ。僕らのライブはスターダムでも見せかけについてでもなかった。落ちていくスターやトップの座から引きずり降ろされる王様や女王についてじゃなかった。僕らのライブは、ノイズと純粋無垢さが一つの輝く声となり、生きたいと叫んだ、目もくらむほどの覚醒なんだ。心に大きな印を残した瞬間だった。少なくとも、僕はそう感じてる。

だから、今これを書きながら、僕らが過ごしている穏やかな雰囲気にとても感謝してるよ…ニューヨークへの旅は本当に平和で、色々なことに想いを馳せることができた経験だった。それをマンハッタンの島を照らす夕焼けの黄色、オレンジ、赤の光のシャワーが完璧に表しているよ。アメリカ東海岸の早めの春に広がる青い空の中、いっせいに響いていた。この素晴らしい眺めはまるで家にいるように感じたよ。深い安心感が、ブッシュウィック・インレットパークでの感謝の言葉を定義していることは否定できない。バンドメンバーで一緒に集まり、友情と献身的な恵、解放と信念への乾杯をしたんだ。僕のコラム “Beauty of Noises and Waves” を始めるのに、これ以上良い瞬間はないと思ったよ。

光が輝き続けるように…そして、もしも“人生について言葉を綴るなら、まず生きなければならない”のなら…僕はまさに、それをニューヨークで経験したんだ。次の旅は:テキサス、オースティン。

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