MONO

僕が個人的に選んだ曲で作った新しいSpotifyプレイリスト“Digital Noises for Analog Souls”を紹介したあと、みんなからたくさんの提案を受け取って、本当にびっくりしたし、嬉しかったよ。音楽はヴィジュアルアートと共に、誰もが共有できる純粋な表現方法だと思う。そこにある感情を感じるために、細かい分析やオーバーな説明は必要ない。だから、改めて、君のお気に入りの曲をコメントやダイレクトメッセージを通して、”お気に入りの曲プレイリスト10曲目”とか、そういう言葉を添えて、送ってくれてどうもありがとう。週1回更新するプレイリスト“Digital Noises for Analog Souls”の10曲目はいつだって、君たちのスポットだ。

このチョイスはバイアスを生むだろう。MONOの新作『Nowhere Now Here』について言葉を書く前から分かっていた。まず、僕は2007年に東京のタワーレコードにあった小さなスクリーンで彼らのアルバム『You Are There』を聴いたときからMONOのファンなんだ。当時はインスト音楽ってあまり馴染みがなかったんだけど、MONOはその表現への扉を開いてくれた。それはのちに、僕の表現における重要なパートとなり、そして僕をMogwaiやExplosions in the Skyなどのバンドへと導いたんだ。でもMONOはいつだって、特別だった。

それからアルバムリリースを逃したことはないよ。でも、それよりも、僕は彼らと一緒に成長をし、進化をし、ファンとしてそれを経験することができた。それって結構、難しくなってきてるんだ…特にエンターテイメントの魔法のカーテンの裏側を知って、かつてお気に入りのアーティストの物語に感動していた純粋な心を失ってしまったから。でも、そんな中でもMONOは、心を偽ることなく創作をするアーティストであり続けている。多くのアルバムをリリースし、ツアーも多く経験したあと、その正直さがどれだけ簡単に汚れてしまうかを知ってるんだ。その理由が何であれ、正しかろうと、間違っていようとね。それでも、僕にとってMONOは、そんな本物、正直さの中で消えていく現実への個人的な錨のような存在なんだよ。

バンドが新しいシーズン、新しい始まりとして、伝説的なプロデューサーであるスティーブ·アルビニ(Fugazi, Pixies, PJ Harvey, Nirvana)と再びタッグを組むと聞いて、すごく興味津々だったんだ。スティーブはお気に入りのプロデューサーの一人で、僕が生涯好きであろうアルバムを何枚もプロデュースした人だ。でも、最近のリリースは正直あまり感動しなくて、驚きもしなかった。間違わないでね。一ファンとしての視点で言ってるだけで、尊敬してるんだ。良いアルバムではあったし、僕は実際好きだけど、でも『The Last Dawn』と『Rays of Darkness』は、いつもなら強く感じる浸りたいという欲求をあまり感じなかった。バンドがスティーブ·アルビニと働くためにシカゴに戻ったと知り、さらにオリジナルメンバーだったYasunori Takadaさんが脱退したと知って、その夕暮れと日の出のあいだにある薄いラインが、どんな音楽を生むのかと興味があったんだ。

僕はアルバムを公式リリースの数週間前に聴く素晴らしい特権を得た…言葉にならなかったよ。僕をよく知る人なら、僕がそう簡単に驚いたり、感激したりしないって知ってるはず。でも正直、『Nowhere Now Here』は良くデザインされた心地良い場所のようなアルバムだと感じるんだ。僕は感動した。説明できないほどにね…それは、あらゆる可能性において素晴らしいよ。だって、純粋な感情へと立ち返るから。その感情が個人的な高揚にどう道を敷くかって頭で理解しようとせずにね。それも最近、だんだんと難しくなってきてると感じるんだ。

言いたいことをまとめると、まぁMONOのような特異なアーティストについて話すときに、まとめるなんてことができるならだけど…『Nowhere Now Here』は、2007年に東京のタワーレコードで初めてバンドを知った瞬間へと引き戻してくれた。タワレコの小さなモニターから目が離せなくなったあの瞬間。まるで、それ以外は目に入らないかのように。でもそれはノスタルジーじゃないんだ。この新作アルバムは、僕自身が心に抱く光と影と同じスペクトラムの中で進化したバンドの音なんだと思う。どの曲も、長い旅路における一瞬を表してる。脆くて、繊細。完全に受け入れたような気持ち。それは、アルビニが手がけるアルバムにある素晴らしく意味深いシグナチャーの回想だ。純粋で、生々しく、正直で、なんとなく彼自身よりも偉大であり、もっとクレイジーに言えば、バンド自身よりも偉大なるもの。

はじめ、どの曲をみんなとシェアしたら良いか分からなかったから、この文章を書いていた僕の手を一瞬、いや長すぎるほど止めて、身を任せた曲たちをシェアしようと思って、このアルバムを選んだよ。

メモ:2週目のプレイリストをスティーブ·アルビニがプロデュースしたアルバムからの曲で完成させることにしたんだ。それもアーティストとしての僕、そして個人的にも重要な影響を与えた曲たちをね。

*プレイリストは毎週更新されるので、このブログで紹介されている楽曲がリストに表示されない場合もございます。

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