[Louder] 彼がカバーした「The Power Of The Heart」は、ルーの作品に新しい命を吹き込みたいという強い気持ちを示している。
掲載:Louder Sound
原文はこちらから (仏語)
彼がカバーした「The Power Of The Heart」は、ルーの作品に新しい命を吹き込みたいという強い気持ちを示している。
ワイドスクリーンで夢を見たアーティストがいたとしたら、それはAlex Henry Fosterだ。2018年にソロデビューアルバム『Windows In The Sky』をリリースしてから、このフレンチ・カナディアンは、大西洋を挟む両側で、素晴らしい称賛を受け、熱心なファンを増やし続けている。エモーショナルで、感覚的で、時に圧倒的なアプローチをするソングライティングとパフォーマンスに感謝だ。彼は、ポストロックからプログレッシブ、アヴァンギャルドな実験的音楽、そして広範囲に渡る情緒的なポップにまで、様々な影響を受けている。
最新のクリエイティブな動きは、型破りでありながらも、これまで以上に野心に満ちていると言えるだろう。彼のバンドThe Long Shadowsと共に、ルー・リードが2008年に作った「The Power Of The Heart」を再解釈したのだ。Velvet Undergroundの故アイコンは、恥も外聞もなく、ロマンチックな賛歌として、この曲を長年のパートナーであるローリー・アンダーソンのために、彼らの結婚式に向けて書いた。フォスターは、普段、真意の読めないクールな存在として知られるアーティストが、その神秘的な雰囲気を脱ぎ捨て、美しく直球的な形でロマンチックな感情を表現する姿に取り憑かれるような魅力を感じたのだ。それは”誠実なモニュメント”だと、本人が描写している。
フォスターの手にかかると、この楽曲はより抑揚し、あらゆる理論を越えて、全てを味わい体験する、人同士の繋がりが持つ言葉にしようのない可能性をオーケストラ的に強化された音で表現したものとなった。そして、自身の楽曲の隠れた側面をライブ演奏にて探求するこれまでの能力から判断すれば、6月から始まるNot All Wonders Have Been Lost UK & ヨーロッパ Summer 2022ツアーにて、どんな風に進化・発展するか、自分の目と耳で確認することを強く勧める。
多くのミュージシャンたちが、彼らのインスピレーションをシンプルにコピーすることから始めるのに対して、フォスターが子供の頃から魅了されてきたアーティストの作品を自分の中に取り込み、愛して、自身のクリエイティブなスタンプを押すには長い時間がかかった。
彼が初めてルー・リードを知ったのは、”子供の頃、父のレコードコレクションの主要セクションに、『Transformer』という奇妙なサウンドのLPを見つけたとき”だ。
モントリオールのフランス語圏で育った彼には、はじめリードが何を歌っているのか完全には理解できなかったが、より深い何かを直感的に感じ取っていた。
“ルーの痛切な歌声が、まるで光り輝く灯火のように僕を導いたんだ”と彼は言う。”本当の意味で僕を捉えたのは、彼の音楽から滲み出る、どこか悲しげな雰囲気だった。初めて聴いた時に感動した彼の音表現の中には、明るく輝く目に見えない何か、説明できない、はっきりと定義することもできないくらいの何かがあって、それは何となく、深い闇に支配されきっていない陰った悲しみのようなもの。”
そして『Metal Machine Music』のような、リードのよりエクスペリメンタルな作品が、フォスターの音楽的な地平線を広げ、のちにインスピレーションのキーとなるSwans、Glen BrancaやSonic Youthへと導いた。
JUNO賞ノミネート経験もあるノイズロックバンドYour Favorite Enemiesのフロントマンを10年ほど務めたあと、フォスターはソロ活動を開始し、カナディアン・アルバムチャートのトップ3を記録した『Windows In The Sky』 (2018) は、息を飲むような新しい側面を持ったライブパフォーマンスへと広がり、2021年発売のライブアルバム『Standing Under Bright Lights』に収録されている。
ソロアーティストとして得た自信が、お気に入りの楽曲をカバーし、その陰を恐れることなく、作品のスピリチュアルなコアを呼び起こし、それを歌うことへと導いた。
“この体験を通して自分を解放していったんだ”と彼は言う。”その視点を得たとき、この曲の解釈を見直したり修正するプロセスから、自分の直感的な流れと身を委ねたことによる完全な解放の結果であると思えるようになった。ノイズがサウンドになり、楽曲のアレンジが精神の高揚へと発展していき、手に入れられないもの、測れないもの、確かにできないものへの祝福となった。分かち合われ、自分の手から離れて初めて経験できる、際限のない無限に形を変えていくアセンション(昇天)。”
その結果は、美しく感情的な力作となった。8分半のフルバージョンとラジオエディット・バージョンの両方が、2022年5月6日にリリース予定だ。
フォスターとThe Long Shadowsは、リリース記念として5月7日にYouTubeで配信ライブをして、この楽曲を演奏する。観る人を魅了することで広く知られる彼のライブパフォーマンスのために、この日は予定を開けておくべきだ。「The Power Of The Heart」の魅力に満ちた感情の喚起を体験するために。
詳しくは alexhenryfoster.com へ
One Louder
2022年4月12日