"みんなの希望が芽生えるとき"

「As Morning Sets In」の2つのセクションを組み合わせて1つの曲として演奏するためのプランを組み立てたあと、みんなとても熱狂していて、曲の進化する本質を探ることにワクワクしていた。疲れ切っていたことなんて忘れてね。Mikkoでさえ、いつもより気合が入っていたのを感じたよ。今やお互いを十分知っているから、励ましやコミットメントから力をもらうことができる。それがグループでいることの本当のエネルギーだ。みんなで一つになれるとき、いつだって前へ進むことができる。どんなに”オフ”であろうと、”疲れて”いようと、”ストレス”を感じたり、”疑い”を持っていても。その流れの本質が、自分が浮かんでいるもののエッセンスを越えた命の高い流れになっていくのさ。”The Long Shadows”のようなバンドを集めようと決めたときに、思い描いたのがまさにそれなんだ。音楽の心と魂に仕える目的のために集まった自己放棄の力。そして、もしもバンドの核心が安定したエネルギーであるなら、僕のクリエイティブな冒険が展開しながら、自分自身をより信頼するようになるほど、それは大幅に拡大されていく。
「As Morning Sets In」の新しい演奏は、最高に”これだ”と思うものだった。各バンドメンバーが自分たちのパートを加えるさまは、全く素晴らしかった。アルバムの旅路を締めくくる曲として考えていたときに思い描いた、ノスタルジックな脆弱性と、けれど希望的な光の集まりである曲のデリケートな部分が際立っていた。いつもはスタジオのコントロールルームから全てを管理するMikkoでさえ、僕らと一緒にUpper Roomで演奏していたよ。彼は柔らかい声で、異なるセクションのチェンジを指示していた。彼は、この曲の最も深い解放を自ら体現していたんだ。それは魔法のようなタイプの瞬間だったよ。自分を完全に捧げるかのような。自分はもうユニークなカラーではなく、幾百にもなる色からできたキャンバスの色合いの一部。そして、それが僕にとっての”Long Shadows”という意味なんだ。それは異なる輝きが結集した、クリエイティブな精神の暗闇を照らす独自の光。僕はより自由に輝く方法を探しているんだ。もし、僕の目の前にそのビジョンが完全に展示されていたなら、それはまさにその瞬間に、僕の心が純粋な高揚感で満開に咲いていたからだ。
のちに技術面が問題にならないように、曲全体をみんなで何度か演奏することにまでなった。どの道もソウルフルで、前へ進ませるものだったよ。6ピースのバンドが、近接感を保ちながら、ライブレコーディングをするのは、想像以上に難しいことなんだ。実際、とてもアートなんだよ。モダンな技術で徐々に消えていっているやり方であり、本物の楽器で自分を表現できるアーティストが減ってきているんだ。だから、全員が信念を持って目に見えないものへと触れられたのは、この瞬間をさらに誇らしいものにした。コンピューターを使いこなせるとしても、人間の抑制されていない感情表現にはかなわない。少なくとも、僕にとってはそうなんだ。たとえ、僕がエレクトロ音楽やヒップホップが好きでも、クリエーションはコンピューターで再現された感覚よりも震える現実を味わうことに帰着する。
「As Morning Sets In」のセッションを、みんな喜びの感情で締め括った。お互いにハグをして、この瞬間を思い切り味わおうとしたよ…誰もUpper Roomを去りたくなかったんだ。これが僕らの突破口だったと分かっていた。楽曲すらも越えた演奏だったと信じているもの。不思議だけれど、僕のお気に入りの本を思い出したんだ…アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』。向き合って、成長するのが不可能に見えるチャレンジと直面しながら、回復力、勇気と忍耐力を得ることについて…10日前にJeffがこの曲は最悪だって言ったところから、もう一度やり直すことに関して、BenがMikkoと”喧嘩”して、僕らが全てを台無しにするのを避けようとしたMikkoの視点から、今この瞬間まで…みんな涙が出そうだったよ。僕らの間で起きたことは、コード進行の変更とか、音のアレンジとかを越えたものだ。それが何なのかをピンポイントではっきり言うことは難しいけど、こういう濃いシチュエーションは、僕らの絆を取り組んでいるタスクや、その潜在的な達成以上に、強いものにしてくれている。プロジェクトの真の結果は、完成するよりもずっと前に経験されているんだ。僕らにとっては、ただ”今”それが起きたんだよ。

もうすぐ夜の22時だ。夕食は19時半に用意されていたから、食事がいつも冷めていて、乾いている事実は変わらないね。今夜の状況を考えれば、特別に美味しかったと言っておこう。1日中、僕らがどんなことと向き合っていたか、全く知らない友人から、ワインまでもらったんだ。目に見えない力がウインクをしながら、”歩き続けなさい”って言っているみたいだった。(そうさ、僕の頭の中で”目に見えないもの”は喋るんだ。だからこそ、時にそこでは臆病になるのさ)僕らはみんな疲れ切って、テーブルを離れたくなかった。会話に花を咲かせ、たくさん笑ったよ。翌日が、より激しくなったのなら、この瞬間はお祝いの価値に値するものだったし、最大限この時間に浸ったよ。休むために1人、また1人と部屋を出ていくまで。


僕のオフィスに向かう前にMikkoをつかまえて(この日記のために下書きだけでもしたかったんだ。ワクワクしてね)今日という日を彼に感謝した。そして、彼のことを誇りに思うと伝えたいなって思ったんだ。彼の素晴らしいリーダーシップと謙虚さに。彼はそれをみんなの達成だって言ったけど、僕はみんなじゃなくて、彼のおかげだよと言ったんだ。音楽プロデューサーでも、船のキャプテンでもなく、一人の人間として。「受け取って、この達成は君のものだよ、ブラザー」と言った。彼は誠実な笑顔を返してくれて、歩きながら、こう言ったんだ:「あぁ、Alex、ちょっと待ってて」もっと親密な会話をするのかな、と僕は思った。「明日、10:30〜11:00までに来て、君のガイドヴォーカルに取り組めたら最高だと思うんだ!おやすみ」と笑顔で言って、僕は心の中で笑った。これが、僕にとっての仲間ってことさ。


メモ:
“眠たいレオのバラード”の日記の中で話したように、レナードは今朝5時半に起きたことに対して、あまり嬉しそうじゃなかったんだ。あと、1日中スタジオに連れて行ってくれなかったことにも、なんとなく怒ってるみたいだった。だから、レナードがようやくUpper Roomにいる”僕”に混ざったときの様子を見てみて。

僕の目の前を過ぎて行っただけでなく、真っ直ぐMikkoの元へ行ったんだ。ビデオに注目すると、レナードがそうするのを僕がちゃんと見ているように、振り返ってるのに気づく。これは痛い仕返しだぞ、レナード。君がそうくるなら、明日覚悟するんだな。今や睡眠破壊ゲームが正式にオンだ 🙂