吐き気、でも全快

レナードと僕は同時に起きた:朝6時半。レナードは危険なまでに1日を始める準備が万端だった。まだ部屋から出ていないのに、早くも吠えていたんだ。渡り鳥が徐々に戻ってきてる。そして、子犬時代からレナードは、自分が守っているテリトリーの上を空高く飛ぶ鳥たちに警告しているんだ。そこまでしなくても、って笑いながら、少しトーンを下げてくれと頼んだ。まだMikkoや他の人たちは眠っているかもしれないから。だから、レナードはバルコニーに座って、空高く飛ぶ侵入者たちがレナードに気づくように、唸り続けた。本当に面白いよ。なんてキャラなんだ。毎日少しずつレナードのことを知っていってる。マッカイが亡くなったとき、レナードのことを心配したんだ。相棒を失って、あとを追うように体調を崩す動物はたくさんいると聞いたから。レナードとマッカイの場合は特別で、8匹の子犬として生まれたときから、一度も離れたことがない。2匹がまだ7週間目だったときに引き取って、それから、6ヶ月間毎週マッカイを病院に連れていくようになるまで、そして耐えられないほど痛々しい旅立ちとなるまで、一瞬だって離れたことがなかったんだ。だから、レナードも一緒にここに連れてきた。たとえ、ここの環境がヴァージニアと比べて制限されていても。それは正しい選択だったよ。僕からも見放されたと感じたら、きっとレナードも体調を崩していただろう。だから、近隣区域の全てを自分のテリトリーとして守っているレナードを見るのは、微笑ましいよ。
めまいや吐き気を感じながら、仕事場のデスクに座ったとき、今日は長い1日になる予感がしていた。手術後からそれが何度も起きていても、普段より激しくなりそうだって感じる瞬間があるんだ。自宅にいたとき、吐き気は毎日のように感じていた。自分を追い込み過ぎていた証拠だ。スタジオに着いてから、そういう感覚は1度しかなかった。だから、今日はチャレンジになるぞって分かっていたんだ。自分の体のサインを聞くことと、この状態を受け入れることで、不安になってパニックになったり、対抗したり、更に追い込んだりするのを避けることを学んでいるんだ。これ以上に状況を悪化させないようにね。だから、ツアーをし始めたときに酷い車酔いに対処したように、今回も自分を管理しようとした。ツアーをし始めたときは、吐き気がすごかったんだ。(君が今、食事をしたり、こういう話題にセンシティブ過ぎないことを祈るよ)だから、酔い止めの薬を飲み過ぎて、また体調がおかしなことにならないように、呼吸のエクササイズを始めたんだ。そうしたら、最終的には酷いコンディションは抜け出せるようになった。今の状態だとこの呼吸方法はあんまり効いてないみたいだけど、精神的には助かっていると思う。

というわけで 、今回も大丈夫だろうって思ったんだ。だから、僕はナンセンスが続くラボに行って、準備をすることにした。悪いアイディアだった。すぐにしばらくベッドに横になるべきだった。僕は気分がものすごく悪くなって、汗をかいて、立ち上がることもできなくなってしまったんだ。悪いものが一気にきたって感じ。だから、スタジオBで静かに、深呼吸していた…息を吸って、吐いて…イメージトレーニングとリラックスするためのエクササイズもした。僕の体調が悪いと聞いたMiss Isabelがリハーサルルームからやってきて、吐き気がする僕のためにジンジャーティーを持ってきてくれた。彼女はとても心配していたよ。歌詞の途中でバスルームに駆け込んだことで、僕がそこまで大丈夫ではないってことを物語っていたんだろうね。立ち上がろうとするたびに吐き気を催していたんだ。それが治るまで2時間ほどかかったよ。酷い状態が過ぎ去ったあと、ようやく立ち上がることができた。”やったぁ”というか、”良かった”と言うべきかな。(健康に関する勝利は控えめに迎えなくては。本当だよ)
目の周りは紫と赤、そして顔色は緑とベージュが混ざった色の僕を心配していたMikko…

– Mikko:「Alex、大丈夫かい?」

– 僕:「もちろんさ。1日中スタジオで君と過ごす準備万端だよ」

– Mikko:「本当に?まだ顔色が良くないけど…」

– 僕:「うん、本当だよ。大丈夫。今日はAlex&Mikkoの日だ。できるだけのことをしよう!」

– Mikko:「分かった!少しでも気分が悪くなったら、言うんだよ?」

– 古い僕の断片(脳を乗っ取って):「うん。健康より大事なものはないよ。心配してくれて、ありがとう。有り難いよ。でも、もう大丈夫だから。きっと素晴らしい日になる!」

– Mikko (ものすごい疑いの目を向けて):「分かったよ。でもゆっくりいこうね。もし気分が悪くなったら、止める。いいかい?」

– 古い僕の断片:「うん!君と一緒にやってみたいことがいくつかあるんだ!」

– Mikko(やる気に満ち過ぎた僕を更に疑いながら):「オーケー…」

– 新しい僕:「でもAlexは午前中ずっと具合が悪かったんだ。Mikkoに言うべきだよ。こんなふうに体に無理をさせたら危険だ。医者の先生がスローダウンするか、バカンスを取りなさいって言ってたじゃないか。僕の大切な友人であり、楽しい冒険の仲間よ、今、僕らがしたことは、すごく悪いことな気がする」

– 古い僕の断片:「あぁ、親愛なる友人よ、君は素晴らしい心を持ってるけど、僕はAlexと長い付き合いだ。彼はMikkoと素晴らしい時間を過ごしたいのさ。それをAlexから取り上げるなんてできないだろう?!そんなことしたら、とっても意地悪だろう?」

– 新しい僕:「あぁ、そうはしたくないよ…AlexにはMikkoと良い関係を築いてもらいたい。変なこと言ってごめん。Alexが本当に必要なものを教えてくれて、どうもありがとう。君から学ぶことがたくさんあるよ。こんなに役に立たないなんて恥を感じるな。ごめんよ。罪悪感を抱くのは楽しいことじゃないね。君とAlexの2人にしておいて欲しい?」

– 古い僕の断片:「そんなことしなくて良いよ。君が今話したことに、様々な宝がある。重い荷物は全て僕に任せてくれて構わないよ。僕はAlexに何が必要か分かっているし、罪悪感も素晴らしいことだ。自分でできないと思っていたことが、できるようになるよ。信じて、見せてあげる」

– 新しい僕:「君は最高の友人だ…大好きだよ!!」

– 古い僕の断片:「おいおい…調子に乗りすぎるなよ、キャプテン・ハピネス。この世界への理解はまだまだだし、それは僕から学んだ方が良い…」

– 新しい僕:「じゃあ、僕の心の中で君をハグし続けるよ」

– 古い僕の断面(独り言):「この新しい奴のことが本当に心配になってきた。僕のいない間にこいつがAlexと長く一緒にいすぎるのも不安だな。オーバーなほどに繊細なキャラクターになって欲しくない。特にもういっつも泣いてるし…あぁ、全く」