エディション5
タンジェで経験されたアイスランドの感情
親愛なる友人や愛すべき人たちへ
知っての通り、僕は6月25日に楽曲「Lavender Sky」のミュージックビデオをリリースした…みんなのビデオへのコメントに感謝するよ。どの言葉も全て、僕にとって深く意味のあるものだ。そして、同時にたくさんの質問も受け取ったんだ。だから、このジャーナルを通して、いくつかの質問に答える時間を取ったよ…
「Lavender Sky」のMVが最高です。氷のように冷たい場所の映像を使うのが、2曲続いていますが、そのロケーションに何か意味はありますか?また、ミュージックビデオの俳優さんたちは、どうやって選んでいますか? – Kevin Reilly, Northamptonshire, UK
このミュージックビデオをアイスランドで撮影したのは何故ですか?この楽曲と何か関係がありますか? – Aurélie Blanchouin, France
「Lavender Sky」のミュージックビデオの3分47秒頃に映るのは、あなたのお父さんですか? – Benoit Tremblay, Lévis, QC, Canada
“pulling the trigger”(引き金を引く)とは実際どういう意味ですか? – Maja, Germany
この曲がタンジェの砂漠と海のあいだで書かれたなんて皮肉なものだよね。
アイスランドは矛盾に満ちた土地だ。個人が持つ感情が複雑なようにね。様々な意味において、広くて、手が届かない。僕らはみんな違う道を歩いているけど、心の中の旅は同じなんだ。多く問いを持ちながら、答えはあまりない…いつだって発展していってるのさ…
この曲がタンジェの砂漠と海のあいだで書かれたなんて皮肉なものだよね。環境は影響を与えると思う。けど、感情はその環境を超越するんだ…僕が曲に注いだ感情が、ビデオに映っていた環境と、よりリンクしたということ。そこに自分自身を見つけたんだ。
“Pulling the trigger”(引き金を引く)という歌詞を閃いたのは、モロッコはタンジェで滞在していたアパートの近くにある狭い通りで、朝の5時頃、おじいさんが膝をついているのを見たときだった。祈りが始まり、そのイメージが強く残ったんだ。おじいさんは彼の神様との親密な瞬間を過ごすために、外からの”引き金(きっかけ)”が必要だっただろうか、と考えた。そうして、僕らみんなが個人的に心に持つきっかけについて考えを巡らせたんだ。僕らを人間たらしめるもの。本質的な僕ら自身について。僕らが否定し続けた、そういう親密なきっかけや、自分や行動を正当化するために使ってきたものまで。僕にとって、アクションを起こす直前と直後の一瞬のようなものなんだ。時間的にも、動きとしても、とても近いからこそ、同じ心音に感じるけど、完全に同じではない。それは永続的であり、不変なんだ。
今でも心穏やかに見返すには、まだ時間がかかるものでもある。
8ミリカメラの映像に映っているのが僕の父親かどうか、たくさんの人に聞かれたけど、あれは友人のファミリーアーカイブからの映像なんだ。僕自身は、父親との写真やビデオをあまり持っていなくてね。子供の頃は経済的に貧しかったから、テクノロジーにはあまりアクセスできなかったし、両親が興味を持つようなものでもなかった。家では本と音楽だったんだ。そして、正直言って、たとえ自分個人のアーカイブがあったとしても、それを使いたいとは思わなかったと思う…ショートムービーに彼の映像を使って、亡き父の思い出を侮辱したみたいに感じたかもしれないし、または常に人の目に晒されていることを知っているから、自分の個人的な生活を曝け出すことは気が進まなかっただろうと思う…そして、今でも心穏やかに見返すには、まだ時間がかかるものでもある。
これまでリリースした11本の公式ビデオから、その進化が認められると思う。
俳優選びについては、いつも直感的だよ…他人には見えないもの、または見過ごされているものを見つけようとしてる。彼らの目からユニークに感情が溢れる様子についてなんだ。顔の表情に見るストーリーや、彼らの手のひらから見ることのできる人生など…最近のエンタメ業界に多く見かけるような、プラスチックなものや偽物の完璧さには興味がなくてね。だから、セレクションはそのキャラクターと同様にナチュラルなものだよ…
これまでリリースした11本の公式ビデオから、その進化が認められると思う。僕の前のバンドYour Favorite Enemiesでプロデューサーとして取り組んだ6本のビデオから、僕自身のアルバム『Windows in the Sky』でリリースした5本のビデオまで。いつも大事なのは、感情がストーリーの中心であること…
いつも愛を込めて
AHF