[American Songwriter] Alex Henry Fosterが新作ライヴアルバム&フィルム‘Standing Under Bright Lights’からのシングル“The Son of Hannah”を公開

掲載:American Songwriter

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2019年7月5日に開催されたモントリオール国際ジャズフェスティバルでのソールドアウト・コンサートを回想しながら、この夜のあらゆる瞬間がAlex Henry Fosterにとって、何か神聖で慰めのようなものになったことが伺える。

彼は今でもオーディエンスの表情や、両手を高く挙げている様子、目をつむっている人たちや、音楽に乗ってゆっくりと体を動かす人たち、または穏やかに涙する人たちの様子を覚えている。このカナダ人アーティストは、コンサートをライヴアルバムにしようとは、またはフィルムとしてリリースしようとは考えていなかった。一夜限りのコンサートとして、パーカッション、トランペット、チェロを含む10人のミュージシャンたちがフォスターと一緒にステージに立ち、非常に美しい照明セッティングではあったものの、パフォーマンスとしてしか考えていなかった…この時は。それから約2年後の今、フォスターはこのコンサート Standing Under Bright Lights (Hopeful Tragedy Records), をノーカットで、4月16日にトリプルLPとDVDとしてリリースする。

“みんなで共に瞬間を体験するとき、どれだけ親密になれるか、というのを思い出させてくれるのが、その超越的な要素だ”とパフォーマンスについてフォスターは言う。”それは僕を越えたものであり、だからこそユニークな瞬間だったんだと思ってる。エンターテイメントではないんだ。そうではなくて、招待だよ。誰もが自分なりに彼らの体験を定義し、味わい方を選ぶことができる招待。こういう瞬間は脆弱だから、慎ましくいないといけない”。

2時間、心(精神)で指揮していた、とフォスターは言う。実際にはオーディエンスがパフォーマンスを導いていた、と。”あれは多分、人生で体験した中でも最も美しく、自由で、高揚する交流だった”と話した。”あれは、生きていると感じることが、どんな意味を持つのかをお祝いしたものなんだ。あのとき、もしもこのコンサートがその後のリリースのためにレコーディングされ撮影されると知っていたら、あらゆる見せかけや自意識や野心で、瞬間を台無しにしていただろう。だからこそ、この瞬間は正直なんだと知っている”。

2時間のコンサートの幕開けとなった、シンフォニックなパフォーマンス「The Son of Hannah」は、絶望の中にも信仰を持ち続けることを映し出している、とフォスターは言う。それは、2016年に病で亡くなった父親と再び繋がることでもあるそうだ。

“「The Son of Hannah」は、僕の父が抱いていた苦悩や痛みの浄化を願うものであり、また、癌という病への避けられない敗北を受け入れながら、自分の過去や欠点と和解するため、心の奥に潜む悪魔から自由になって、そこに永遠の安らぎを見つけるために、最後まで人生を捧げた男へのオマージュなんだ。深い絶望を感じている時に、信仰を持ち続けようともがく心を映し出したものであり、希望が見えない時に自分が深く必要としているものを認めることでもある。けれど何よりも、これはある男が罪を償ったことによって、息子の許しを受け、更には彼自身の自由を見つけるように導いた感動的な証なんだ。その自由が、どんな意味を持っていても”。

深い混乱に駆り立てられ、フォスターは繊細で不吉な言葉から、より正直で、生々しいものへと巧みに進みながら激しく宣言している:He left me with nothing / No words, no direction to set myself in / But he gave me everything I’ve ever needed…Taught me to feed a spirit of my own / To carry my voice beyond morning views / And to leave the past behind.(何も残さずに逝ってしまった / 言葉も、行き先も告げず / でも僕に必要なものを全て与えてくれたんだ…自分の精神を育てることを教えてくれた / 朝の眺めを超えて声を伝え / 過去と決別することを)

「The Son of Hannah」は、父親が亡くなったことや、自らが持つ逃避の感覚を受け入れようと努力している息子の視点から語られた父親の人生の物語。

父親を亡くしたあと、タンジェへと身を隠すように向かった彼は、長年に渡り活動してきたバンドYour Favorite Enemiesを一度休止し、その後の2年間を、感情のデトックスをしながら、やがて嘆き、混乱や自己発見へと繋がる詩を書き綴った。この心と創作の休暇が、結果として2018年のソロアルバム Windows in the Sky』へのリリースへと導いた。

モロッコという外国に身を置くことは、このアーティストにとって不安なことではなかった。彼は現在、ヴァージニアに住んでいるが、実際どんな場所にいても家にいると実感したことがないと認める。それでも、彼が住んだ全ての場所が、創作的な影響を与えていることは意識していようと、いまいと、確かである。

“それは言葉や音を形作るのに大いに貢献したと思う。それは僕がときに扱いたくない、あるいはその存在を認めたくない感情のベクトルなんだ”とフォスターは言う。 “でも、その感情はこれらの経験に深く関係している。それらは存在しないけれど思い耽った場所の香りを持っているかもしれないし、ときに全く予期していなかった形で再び現れたりするんだ”。
 
思い返せば、『Windows in the Sky』は、季節的な要素が弱まり、カナダの秋と冬、北アフリカの砂漠への順応から部分的に引き離され、他の思考、記憶、ビジョンの流れと混ざり合ったと彼は言う。
 
“創作は僕らが受け入れたものの本質を映し出したものであり、自分のアイデンティティを激しく非難するのと同じくらい、それが人としての僕らを定義すると信じてる”とフォスターは言う。”こじつけみたいに聞こえるかもしれないけど、もしも僕らが自分のいる環境から生まれたものでなかったら、少なくとも、その環境の中で経験したことから自分が望むものによって深く影響を受けていると信じてるよ”。
 
ソロ活動の前に10年ほどYour Favorite Enemiesとして過ごしてきたフォスターは、バンドとしての立派なセットの裏に隠れることができていたが、自分のソロアルバムを初めて明らかにするのは難しいタスクであり、Standing Under the Bright Lightsを演奏するのは、とても慎ましいことだったと言う。
 
“何度も何度も演奏することで親密なエッセンスを失うのではないかと怖かった”とフォスター。”ただの繰り返しの演奏にすることなく毎晩、自分を曝け出すことができるのか分からなかったし、毎回のライヴ演奏を延々と続く嘆きや悼みにしたくなかったんだ”。
 
とても個人的で深い楽曲を演奏しながら、それは、より易しく、癒しへと向かうプロセスになっていった。
 
“ヘヴィーバンドというコンテキストの中に隠れることができていたから、それまで知っていたことを捨てなきゃいけなかったんだ”とフォスターは言う。”それはもうステージ上でジャンプすることじゃなかった。すごく怖くなったよ。親密なセッティングで自分をさらけ出すことがね”。
 
今やStanding Under the Bright Lights(光の下に立つ)というタイトルで、フォスターの新しい創作状態を遠回しに描写し、アーティスト自身を明らかにしている。これはフォスターの感情の旅路にある真髄であり、初めて外へと映し出されたものだ。
 
“自分に正直になって、ありのままの自分として人前に立つという視点を理解できなかった理由を考え、失敗への恐れや、拒絶、十分でないと言われる恐れと向き合わなきゃいけなかったんだ”とフォスターは明かす。彼の楽曲の中で自分自身を明らかにするのはまだ難しいことではあるが、コントロールしようとするよりも、受け入れることを学びたいと語った。
 
“生涯ずっともがき続けてきたことが、一瞬にして再発するんだ”と続けるフォスター。”でもそれは、解放すると決めたとき、ありのままを受け入れ、そこから歩き始めようと決意するときにこそ、人生の流れは動いていくんだってリマインドしてくれるよ”。
 

TINA BENITEZ-EVES
2020年4月8日

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