ヘア・ミー・アウト/ゴミだよ

日が経つのが早くて、びっくりするよ…ヴァージニアでは時間が止まっているんだとしたら、本部に戻ってからのペースの速さが信じられないくらいだ。スタジオでの作業を始めてから特に…僕のすべきこと全てが、注意深く計画され、計算されないといけない。そうでないと、残りの激しいプログラムが一瞬で崩れてしまうから。僕みたいな柔軟性と順応性が必要な人間にとって、毎日の習慣に関して誤差の範囲が、たとえあったとしてもほとんどないのが面白いよ。それは、明日からもっとクレイジーになるだろう。僕らのアルバムプロデューサーとスタジオエンジニアが来るからね。医者の先生が脳を休憩させて、ストレスの多い状況を避け、自分で与えているプレッシャーを弱めて、気楽に過ごしなさいって言っていたのは、全く違う意味だったろうね。きっとだからこそ、ここ2週間ほどで口がすっぱくなる程言っていた、”リラックス”とか”禅”について同意するたびに、彼らは「でも、君のことだから、ただ注意して、体がハイパーアクティブな脳に送るサインを見逃さないように」って、言ったんだろうな。今日は、朝に続いたミーティングと、Benとのスタジオ・プロダクションへの技術的なアポイントメント(1日に必要な歩数を確保するために教会内部を歩き回りながら…だって最低でも1万歩から1万5千歩が必要なんだ)のあと、少しゆっくりすることにしたよ。

まぁ…僕の午後の「ゆっくりする」というのは、必ずしもスローダウンしたり、実際に少しリラックスしたりすることではなかったけどね。それは主に、アルバムに没頭する前に緊急的にやらなきゃいけないことが多くあったからだ。そして、そのうちの1つは散髪だった。僕の髪は、とても天気の悪い日のハンガリーの犬種コモンドールみたいだったのさ。それに僕は帽子がそこまで好きじゃないから、美容院に行くしかなかったんだ。美容院へは年に1回行くくらいで、いつもMiss Isabelにリフレッシュしてもらってる。けどそれも、美容院でやってもらったヘアカットの痕跡がなくなり、リフレッシュするものがもう何もないと彼女が言うまで。その時点に到達すると、僕は完全に一人なんだ。Miss Isabelは僕の”悲劇的な髪”または”悲惨な髪”について、それ以上責任を負ってくれない…僕の寛大な頭皮にとってはとても悲しいことだよ!
美容院へは車で90分かかる。遠すぎるって思うだろうけど、その美容院のオーナーとはもうずっと長いこと友人でさ。Jeffは彼女と同じハイスクールだったんだよ。だから、遠いけど彼女の元へ行くんだ。とても尊敬している人でね。子供の頃はかなり大変な思いをして育った人なんだ。彼女は大したことないって言うだろうけど、そんなことない。自分の運命を環境のせいにしない人や、人生の難しい出来事を言い訳に使ったりしない人を深く尊敬するよ。彼女はそんな世界からは程遠い人で、サロンは僕が育った街の古い地区に位置してる。僕の十代のほとんどを過ごした通りからすぐの場所だよ。ヘアカットをし、Éliと懐かしい思い出に花を咲かせ…行って帰ってくるのに計3時間かかるけど、その価値がある時間。その3時間で、誰からの邪魔も入らずに、Jeff&Miss Isabelと長めのビジネスミーティングができる。全ての事柄にプラスとなること。強いて言うなら、ダウンサイドは”リラックス”ができないということかな…でも、誰かがやらないと、だろう?

30分間美容院の椅子に座っていると、まるでバケーションみたいな感じがするんだ。とってもリラックスできるんだよね…Éliは、僕が彼女に”指示”していると笑うこともあるけど。「何か適当で、でもあまりにも大げさじゃないものが良いな。髪を伸ばしたいけど、こことここを剃りたい。あ、待って…いや、いいよ、もっと剃っていいよ」とか。それはまるでショーのようで、周りの女性たちも笑っているよ。そこは洒落た、割と高級な場所なんだ。僕を場違いだと感じる人もいるかもしれない。でも、そこの女性の中には、自分が望む髪型について僕に意見を尋ねることもある。「ここに来たときの僕を見ました?いや、髪に関して僕は最適なアドバイザーじゃないと思いますよ。けど、まぁ、それとそれをやった方がいいかもしれません…あなたに似合うと思う。少し定番っぽくない感じにね」と、結構普通に答えたりする。「はい、そこのアーティスト、私のお客さんに手を出さないで」とÉliが笑ったよ。でも、彼女たちが尋ねた後で無視するわけにはいかないだろう?美容院には歳をとった犬がいて、とても可愛いんだ。だから、ついマッカイについて話し始めてしまった…僕がいつもマッカイについて話したり、レナードについて話したり、写真や動画をみんなに見せたりしていたから、みんなとても驚いていたよ。「待って、待って!この角度から見てみて、二匹が走っているんだ」とか、本当にボーイズについてばかり話していたんだ。だから、楽しい時間が少し悲しくなったのは仕方ないね…それでも、みんなが僕に対して本当の思いやりを持ってくれていたのは感動的だったよ。正直言って、僕はまだマッカイがいない事実を否定しているし、あまり考えすぎると感情的に転落しちゃうから考えないようにしてるんだ。

Éliとのランデヴーは、共通の知り合いについての近況を知る機会でもある。それがヘアカットの一番興味深いパートでもあるんだ。「あの人がパン屋さんをオープンしたの知ってる?あの人とあの人、離婚したって聞いた?飲酒運転のニュースであの人を見た?あの人とあの人、子供4人目だって、信じられる?あの人のオーバードーズのこと聞いた時びっくりしたでしょう、あなたたちいつも一緒だったじゃない!」僕の答えはいつも”ノー”だ。もしくは、”子供いたの?”とか”え、誰?”というもの。Éliのサロンに来るたびに、自分の青春を一緒に過ごした人たちの近況を少しも、というか全く知らないことに気づかされる。僕は酷い人間だろうか、それとも、ハイスクールの古い友人たちの生活をスパイし始めるべきだろうか?多分、もっと頻繁に美容院に行けばいいんだろうね…それで全てが済む気がする!

ヘアカットの進展

1. 散髪前
2. ヘアスタイルのインスピレーション(Miss Isabelが送ってきた)
3. ヘアカット
4. 現実
変なメモ:家へ帰る途中で、オーバードーズをした人が僕の近しい友人だったことを思い出したんだ。彼の名前をどうして忘れられる?僕らはいつも一緒につるんでいた。バレないでCDや本をどうやって盗むかを教えてくれたのも彼だ…!彼は僕が出会った中でも最もクレイジーな人間の一人だよ。だから、すぐにピンときても良いはずなのに。僕の記憶障害はちょっと深刻なのかも…。結局、僕には休みが必要なんだな…