1年ぶりに聴く自分の声

僕は1年以上も歌っていない…時々、ハミングしたりする以外は。だから、耳鼻科の先生から徐々に以前のように歌い始めても良いと言われたときは、とってもワクワクしたけど、長いこと使っていなかったから、自分の声がどんな音になるんだろうかと不安でもあった…特に手術中と集中治療室にいた間、ずっと喉に管を通していたから、普通に喋れるようになるまで約3ヶ月ほどかかったんだ。すぐにでも歌い始めたいっていう思いと、1年前の自分とはかけ離れてしまった自分に戸惑いがあったのも確かだった。歌うことは感情を伴うものであり、ここ数年、引きずってきた心理的な要素、すなわち、深い疑い、叫びたいという思いを麻痺させていた不安、頭の中に浮かぶ過去の作り物を通り抜けてナビゲートする必要のある心の解放のフォームだ。僕の心配は、歌うことに関する理論的な要素というよりも、感情表現についてだった。いつだって僕にとっては、全てか無かなんだ。それが囁きでも、叫びでも。そして、”全て”になるために、僕はそういう不信感や否定の声を”無”にしないといけない。そうするには強い意思が必要だ。 Your Favorite Enemiesのリーダーをしていたときは、毎回のコンサートの前に病気になっていた…自分の限定的な悪夢に囚われている時、10年という歳月は長い。それは自分のソロとしての冒険を始める前に、完全に自分をコミットしないといけなかったことだ…瞑想、視覚化、プログラム解除。今みたいにステージの上で歌うことを楽しめるようになるまで、心の中で深い旅を歩まなければいけなかった。じゃあ、歌うことについて僕は今、どう感じているんだろう?その答えを見つけるのは、恐ろしい考えだったりする。
久しぶりに手にマイクを握ったとき、不快なスティグマによって、心の中で震えていた。”もしも?もしも…もしも、素晴らしいこの全ての時間がここで終わってしまったら?もしも、マネジャーが僕を信じるのを止めたら?世界的に有名なプロデューサーをガッカリさせたら?アルバム制作がもうすぐ始まるのに、僕の準備ができていなかったら?もしも歌えなかったら?もしも音程を外してしまったら?もしもメロディーのアイディアが思い浮かばなかったら?もしも何もかも下手くそになってたら?もしも、またみんなをガッカリさせたら?もしも?もしも?もしも、スタジオのコントロールルームにいるバンドメンバーたちが僕を励ましてくれているのに、それでもできなかったら?もしも?もしも?もしも撮影されていたら?もしも…?” そして、Benの手が僕の腕に触れるのを感じた。「君はもう一人じゃないよ。今度は俺らが君の世話をする番だ。時間をかけていいよ。プレッシャーを感じる必要はない。時間が必要なら時間を取るし。君と僕だけの方がやりやすいならそれでも良い。これは君の時間であって、君が望むなら、僕らも一緒にその瞬間を経験するよ」と、優しい笑顔で言ってくれた。そうして、Jeffが僕の肩に手を置いて「君は1日中、僕らにこうしろ、ああしろって叫び続けてきたから…スポークンワードは、君が浸るのにちょうど良いんじゃないかな」と言った。そして、僕は笑い出したんだ。Jeffは間違ってなかった!

無意識に遠ざけていたマイクを手に取り、目を閉じて、美しい色の流れとして音を感じ、スピーカーから自分の声を聴き始めた。別に素晴らしくも、思い出に残るようなものでもなかったけど、自分の中に明るい感覚が芽生えるのを感じた。もしも、できるなら?もしも、気持ち良くなれたら?もしも、続けたいと思えたら?もしも、もっと探究したいと思えたら?もしも、もっと深く自分の身を任せたいと思えたら?心理学者は1つのネガティブなことを乗り越えるのに、5つのポジティブな考えが必要だと言っていた…

僕にはできる。
気持ちが良い。
もっと続けたい。
もっと探究したい。
もっと深く身を任せたい。
これは呪文ではないけど、真実だ。たとえ、その場だけの真実だとしても、真実には変わりない。そして、新しく生まれ変わった自分を築いていけるだけ十分な認知だと思う。それは現実であり、残りは僕の恐れと、他の心的外傷後ストレス障害によって構築されたもの。

僕は2行の歌詞を繰り返し歌い終え、Benを見て言った。「うーん、もっと自然に音楽の波に乗れるように、ちゃんとした感情のトーンを見つけないといけないな」みんな大声で笑い出した。「戻ってきた!!!」って、Benが叫んだよ。「え、何?何の話?」と僕が真面目に聞いたら。「ブラザー!声を失って、1年間もマイクを握っていなかった奴が、スタジオに入って数分で、2行しか歌ってないのに既にコメント入れてるとか…!俺たちはそんなの気にしてないよ。勝てる勝負を楽しもうぜ!戦争は待ってくれる」とBenが答えた。Miss Isabelは目から涙が溢れていて、Jeffは僕をハグして、誇りに思うと伝えてくれた。僕は笑った。この瞬間がこんなにも重要なものになるなんて、誰も教えてくれなくて良かったよ。余計に固まっていただろうからね…!

Mooseはタリスカウイスキーとグラスを持って戻ってきた。Benがこういう瞬間をお祝いするために買ったものだ。今日はとっても素晴らしい1日だった!