嵐、流れ、荒廃

Mikkoが現れたとき、僕は半分そこにいて、半分いなかった。でも隠すのが苦手だから、彼はいつもの僕ではないことをすぐに察したんだ。しばらく一緒に話したよ…それは、アルバムのプロセスに遂にストップをかける最後のパンチだろうかと疑うプロデューサーではなく、ただ慰めにきた友人だった。これまで、こんなにも感情的に深いブローを連続して受けたことはない…まるで早すぎるほどに過ぎていく日々だけでは十分ではないかのように。僕はまさに嵐の真ん中にいるんだ。僕の人生の大切な要素が次々と奪われていくのを見ている。そういう場所にいることが、ポジティブなのは分かっている(過去の出来事を全て剥ぎ取った状態)けど、それでも深く心が傷つく。「一旦、ストップするべきだろうか」と思った…「しばらく休みを取るべきだろうか?みんなをガッカリさせたという罪の意識なしに、そうできるだろうか?」 友人やバンド仲間たちが、アルバム制作に関わる中で、それを満ち足りたものにしているのを見て、感謝しているんだ。特に、愛する人たちが、僕の回復のために1年以上も待っていてくれたから。僕がどんな人間なのか分かってきたよね…モハメド・アリを尊敬するのも不思議じゃない。これは僕の最初のロープアドープではないし、最後でもないよ。Benは笑いながら「君は本物のブリット・アイリッシュ・マザー・ファッカーだ。誰も君をダウンさせられないよ」って言うんだ。いや、十分あり得るよ、ブラザー、十分にね…君が想像するよりも、ずっと。

僕らは長い散歩に出た。そうするといつも頭がすっきりして、1日1万歩のゴールも達成できるんだ。心は少し動揺したけど、効率に今も価値を置いてる。家に戻ってきたあと、Mikkoが僕を見て:「断っても大丈夫だけど、「As Morning Sets In」のガイドヴォーカルをやってみないかい?」と言うから、スタジオに戻ったんだ…1日中泣きながらベッドで過ごしたり、自分を可哀想だと思うなんて意味がない。現実に潜む悲しみに耐えなきゃいけないのは自分だけじゃないから。僕がスタジオに戻ったことにみんなが驚いた。僕は人生の嵐に直面する長い感情的な旅について思いを馳せる曲のヴォーカルガイドをした。自らの絶望と闘う長い夜を越えたあとの復活、自分のもとに届く慈悲深い光として、朝日がやがて遠くに現れると信じながら。暗闇の繭を破るチャンスを掴んだら、時間の経過と共に、自分がどれだけ絶望的になってしまったかを認めるには勇気がいる。だからこそ、心の中で燃えている家から抜け出すために想像を絶する努力ができる人を尊敬するんだ。僕はよく”扉”から、”光”から、あと一歩のところで、床に倒れてしまう。何もかもを放棄したくなる度に自分に言い聞かせていることだよ:あともう一歩、あと一回動けば…自分に残っていると思っていなかった強さを越えると、誰かが助けに来てくれると分かっているから。扉に近づき、光に近づく…

「Storm」というタイトルの曲があったんだ。その時の状況を完璧に表したタイトルだよ。この曲をアルバムに入れる候補として取り組みたかった。だから、みんなを呼んで、ライブ演奏してみようと言ったんだ。最初からとても素晴らしかった。Mikkoは熱気に溢れ「最高のチョイスだ、Alex!たくさんアイディアが浮かんできたよ」と言った。僕は笑って、彼が僕をスタジオに呼んだ時、ただ2分のヴォーカルレコーディングになるだけでなく、バンドを巻き込んだお祝いのモーションになるって分かっていたでしょ、と言った。「酷い知らせを受け取ったあとに、今日は休日にするって決めていたなら、それを尊重しただろうけど、自分の気持ちと繋がるためにノイズとエネルギーが必要だろうなって思ったんだ」Mikkoは全てにおいて正しかった。もしも、多くの人が平和と沈黙を探すのなら、僕は人生のカオスの中に慰めを見つけるんだ。他の状況だったら、僕はニューヨーク、東京やベルリンへと飛んで、自分の中の怒りや痛みを取り除こうとしていただろう…代わりに、今回はバンドの混乱的なサウンドへと身を浸したんだ。「Storm」(嵐)…これ以上良いタイトルはなかったね。

曲は、最初に感じたよりも良い印象だった。テープループを通して、特別な音のパーソナリティを与えたかったけど、それは明日の朝、Jojoが戻ってきてから。今夜はモントリオールで Dune 2のプレミアを観に行ってるんだ。ラッキーだよね。でも、その価値があるよ。彼女はとても頑張ったからね。彼女はいつも笑顔で、プロセス全体に素晴らしい雰囲気をもたらしてくれるんだ。だから、この曲をプッシュするよりも、「Walk Fast」という曲に取り組むことにした。「Storm」の最後に付け加えるパートを探していたんだけど、パートを演奏し始めたら、Mikkoがスタジオから出てきて、演奏を続けるように言ったんだ。彼はマイクを動かし、僕らは直感的に曲を1時間くらい演奏したかな。それは“Run Run Run”になったんだ。きっと早く歩くだけじゃ物足りなかったんだろうね。良い意味で、アルバムの他の曲とは違っていた。僕は、叔父さんが周りの人たちから、どれだけ尊厳を奪われたかという話と、過ぎ越しの祝いを並べてみたんだ。アートを僕の怒りの人質にはしたくないし、他の曲とのバランスのために利用したこともない。Taylor Swiftの”元カレへのリベンジ”作品を羨ましいとは思わないけど、そうしたくなる気持ちは理解できる…だから僕にとっては、他人へ与えるものに関連する様々な感情と、簡単に奪われてしまうものとを統合することについてだったんだ。とても価値あるものを持っているからこそ、絶対にならないと約束した人間にすらなれること。または、朝が来るまで、そういう個人的な「要素」を守るために、自分自身の一部を喜んで犠牲にするほど僕らが大切にしがみついているものは何だろうか?手放して、信頼するのは簡単じゃない。僕らがそもそも持っていたものを”盗む”ための完璧な言い訳を探す方が便利であるのと同じように。この2つの別々の特徴が僕らの中に生きているんだ。少なくとも、僕の中には存在する…

Mikko: 「すごくいいよ!こっちに来て聴いてみて…」
Ben: 「俺らみんな”オン”ですらなかったのに、もう聴くの?」
Mikko: 「雷をボトルでキャッチしたってくらい良いやつだよ…よし、聴いてみよう!」
僕ら (聴いたあと):純粋なエネルギーと誠実さを感じる
Alex: 「もっと曲に付け足して良い?3:15しかないからさ」
Mikko: 「Alex、君は疲れてるんだ。少し休みなよ」
みんな大笑い…
Alex: 「そうだね、じゃあまた後にしよう」
Mikko (笑顔で): 「もちろんさ、もちろん」
Ben: 「しないね🙂」