自分の権利のために戦わなきゃ… “As Morning Sets In” 

僕がどうしているか、そして手伝いが必要かどうか、Benが覗きにきた時、僕はナンセンスが続くラボで、「Chasing A Ghost」という曲の言葉とメロディーに取り組んでいた。紙きれがそこら中に散らばっているのを見たBenは声を出して笑ったよ…僕の作詞用のバインダーは開かれ、歌詞がノートと一緒にそこら中に散らばっていたんだ。

Ben:「調子はどう?」

Me: 「オーケー。認知症と神経症っていう言葉をどこかに入れられないかと思ってるんだ」

Ben:「どの曲に?」

Me: 「Chasing A Ghost」

Ben: 「待って、認知症と神経症っていう言葉を1つの曲の中に入れたいの?」

Me: 「そう。精神的なぼやけと認知失調の初期段階のテーマを探っているんだ」

Ben: 「ワオ、すごいね。”神経症”っていう言葉が入った曲は聞いたことがない気がする」

Me: 「認知失調の初期段階について本を読んでいてさ。自分の脳みそがどれだけ早く劣化していくかを知るのは、興味深いよ」

Ben:「自分のコンディションを心配してるの?」

Me: 「イエスとノーかな。人間の行動心理などのフィールドで脳に関する話題には、常に興味があったんだ。カレッジ時代に遡るけどね。だからこそ、心理とソーシャルワークを大学で専攻して、副専攻に芸術を選んだんだ。だから、僕の曲の一つが、そういう親密な事柄の話題になるときのために、自分で準備していたのかもね」

Ben:「高価な歌詞だね」

Me: 「そうだね。どの曲のどの言葉もそうだ。いずれにせよ、全部高価だよ。少なくとも、僕はその分野で大学の単位を取得してる」 

Ben: 「一つ確かなことは、君のライムしてるアプローチがすっごい良いってこと。メロディーは大胆で深くもあって、フックがある」

僕:「ありがとう。リズミカルなヴォーカルにまだ完全には慣れていないけどね。僕のスポークンワードのアプローチをよりダイレクトで目的を持った解放にしたいんだ…それで、君は?Mikkoとのスタジオはどう?」

Ben(沈黙してから躊躇って):「正直、大変だよ。口論になってさ、それが激化する前に出てきたんだ…」

僕:「え?なんで?」

Ben:「うん、まぁ、また「As Morning Sets In」なんだけど。なんか違う気がしたんだ。だから、別のことをトライしてみたくて。で、Jeff、Sef、Miss Isabelと俺でコントロールルームに集まって、君のヴォーカルメロディーを軸にして、ちょっと書き直してみたんだよ。今回はこれだって思えたんだけど、Mikko的にはうーんって感じらしくて。この曲は彼のお気に入りの一つだからさ。だから、君があとはどう思うかだよ」

僕:「オーケー…今やってることが終わったら、聴きにいくよ」

スタジオ内のBenとMikko

そして、Mikkoが扉の前に現れた。僕はお互いに説明ができるよう、彼を中に招いた。そうすれば、このシチュエーションに誰かが対処するのを待たなくて良いし、クールじゃないときに全部上手くいってるフリをする必要もない。直接話しをしないまま物事を進めるのが嫌いなんだ。そういう時にこそ、関係が弱くなるし、疑う気持ちが大きくなっていく。僕らのように身体的にも精神的にも疲れているとき、その罠にもハマりやすくなる。真実ではないことを疑い始めたり、仲間が自分を孤立させようとしてるのでは、とまで思ってしまう。そうなると、エンディングは悲惨なものとしてまとめられるし、それは最終的に、冒険が破滅的な結末で終わるか、プロジェクトが利己的な緊張によって歪められ、そこにあった関係性の不履行によって完全に汚されてしまうかのどちらかであることを意味する。他の言葉で言えば、そこにハッピーな余波はない。そうさ、“Your Favorite Enemies”として何度もそういうことを経験した。状況を軽視したり、流れに任せたり。けど、やがてその流れも存在しなくなるんだ。

アートを創作するBenとAlex

スタジオのナンセンスをまとめようとするMikko

だからこそ、僕はBenを誇りに思った。自分の意見を控えることなしに表現しただけでなく(それはいつだって彼にとってのチャレンジだったんだ)、Mikkoの意見にも耳を傾けられるだけオープンでもいられたから。自分のポジションに関わらずね。特に、僕のプロジェクトでコラボレートすることは、かなりのチャレンジでもあるから。急に僕がこう言い出すこともある:「うん、良いね。というわけで、全部変えて、僕らが何を見逃したのか見てみよう」ってね。そして、みんなにとって、毎日、常に、あらゆる側面において先を見据えるのに必要なエネルギーを僕がまだ持っていないことも、チャレンジだ。それが、Mikkoが座っている”椅子”なのさ。僕らの中で座るのが一番難しい席だよ。だって、僕の健康と精神的な状態が実際にどんなものであるかに関わらず、Benと僕は全てにおいて、大きなスペースを占めているから。だから、もしも、僕らが何者なのか、はっきりとした理解を持っているなら、僕らが探究したいのと同じくらい、柔軟になりたいのと同じくらい、Mikkoが彼特有のユニークな素材を全体のレシピに加えるのを受け入れたいと思っている。そうじゃないと、僕らの考えや経験を広げられないからね。

僕らが話している間、Mikkoはとても落ち着いていたけれど、アルバムが彼にとって深い意味を持ち始めていたことに美しく感情的になっていた。そんな姿を見たのははじめてだった。この旅のどのパートにも感情的に関わっていたんだよ。どの参加者も、そもそも、そこにいるために支払わなきゃいけなかった個人的な”代償”を知っていて、このアルバムのテーマをリアルタイムに経験するのが、どれだけ痛みを伴うものかを理解した…彼にとっては、曲を作ることについてではなく、みんなの人生の欠片がこの航海を確かなものにしているんだと。でも、素晴らしいアルバムが全てを見直して録り直すことで台無しになってしまうことも同じように心配していた。彼にとって、これまで録った音は既に素晴らしいものだったんだ。たとえ、最終的な形からはかけ離れていて、まだまだ肉付けが必要だと分かっていても。だから、「As Morning Sets In」のプロダクションセッションを再び開始したとき、彼は心配した。今持っている勢いを失ってしまうかもしれない、と。そして、既に取り組んできた曲までをも、やり直すのではないかと。彼はまた、次のセッションのために、彼がここに戻ってきたときは、できるだけ僕のために時間を割きたいと考えていたからだ。その感覚においては、とても注意しないといけない。「このアルバムはAlexだ。彼が感じるまま、見るままに、自分自身を表現するチャンスをできるだけ多く与えないと」と結論づけた。

彼の心配と不安は正当だっただけでなく、Benと僕の耳には、深く心を打つものとして入ってきた。僕の新しいマネジメントファミリーを除いて、多くの人からサポートされたことはないんだ。少なくとも、そこまでの感情的なレベルでは。だから、僕らの会話を終えたとき、スタジオのコントロールルームに戻り、2つのバージョンを聴こうと提案した。というのも、正直、曲について何も覚えていなかったからだ。ほんの少しも。BenとMikkoは、2人が口論していることについて、僕は全く何も分かっていないのを見て、笑い始めた。僕は彼らを見て:「脳がぼやけているんだ、ごめんよ」と言った。それに対し、Benは:「君の2つの脳が同じ方をピックアップしてくれたら良いな」Mikkoも笑っていた、特に僕がこう付け足した体:「僕らの会話を覚えていないからって、僕の状況を笑って良いことにはならないよ、ブラザー。心配しないで、古い僕の断片が覚えてるから」みんなでスタジオに戻る前に、Benが全てをまとめた:「そう願うよ」 🙂 

スタジオで仕事をしたあとのAlexとBen

スタジオで仕事したあとのMikko

“人は皆違っていて、皆、不完全だ。
そして不完全は、
それぞれの人間と、僕らの仕事を面白くする”
– Rick Rubin

追加メモ:
この日の朝にBenとMikkoの間で少し緊迫感があったのであれば、「As Morning Sets In」を聴くためにスタジオに座った頃には、全くなくなっていた。この楽曲をフルで聴けて嬉しいよ。僕がやったヴォーカルメロディーに特に感動した。目に見えないものへと一歩を踏み出す勇気をくれた瞬間。その感情的な解放を感じられたんだ。だから、Ben、Jeff、Miss IsabelとSefがそれをサポートするために弾いた音を聴いたのは、すごく心温まる気持ちだった。そして、Mikkoとその前にやった2つ目のセクションも。だから、僕の考えはクリアだった。

僕:「みんな、こういうのはどうかな。君たちがやった曲の最初のセクションを、Mikkoとやったセカンドセクションとブレンドするってのは?この親密な感情をつなげる最高の方法は、それだと思うんだ…」

BenとMikkoは笑いはじめた。残りのバンドを呼んで、それを実行するためのアクションプランをセットするためにね…  

Ben、Alex&Mikkoが今、一緒に創作する様子