Canadian Musician コラム / 最初の曲を書いたし…教会を買おう

掲載:Canadian Musician (P. 27)

原文はこちらから

どんなバンドやアーティストにも、自分の夢がもう少しオーガナイズされて、組織として運営されるべきだと考える時期がくる。そして、その重要な瞬間には、常に問いがついてくるんだ。その答えは既に自分たちの中にありながらもね。もしくは、そうだと信じたい。残りの人生をヴァンの中で過ごしたり、他人の家の床で眠ることになっても構わないと既に同意していた場合、他に何を望む?ガス代、サンドウィッチ半分、安いビール1缶(オーケー、2缶にしておこう)さえあれば、完璧に持続可能な未来だって分かっているときに?プランB”を持つことは、自分のアートを信じていないということじゃないのか?ほんの少しの疑いはヴィジョンが欠落してるってことだろう?もしも、幻想が現実のカケラを引き寄せるものなら故にクリエイティブな旅路への路上バリケードになり得る現実に対処しなきゃいけないことは、それでもなお、かなり残酷になり得る。特にバンド仲間やコラボレーターたちが違う野望を持っている場合はね。最初は簡単に思えても、集団のコンテキストの中で個人的な問題をナビゲートすることは、様々な弊害を引き起こしかねないんだ。100ドルを5人で分けるというのが、初めは問題なかったのに、クリエイティブな旅路において次のレベルへと進みたいとき、またはみんなバイトを辞めたい(そんなに日数も出てなかったし)と思っている時には、緊迫感や複雑さ、口論などがエスカレートしていく。

10年前にYour Favorite Enemiesを始めた時、バンドの急成長という恩恵と呪いを経験した。最初は、全てがシンプルで自然に感じたんだ。けれど、いつしか始まった時よりも速いペースで、より複雑に、痛みを伴うようになった。意思決定に多くの人間が関われば関わるほど、問題も多くなるというのは本当だよ。だから、6人組のバンドメンバーに加えてバンドの主要な側面(レーベルのマネジメント(当時は名ばかりだったけど)や発送の管理、オンラインストアのセットアップやメディア関連など)に関わっている人たち15人を想像してよ言葉を変えれば、当時はその役割よりも、みんながFacebookをやっていた。ミーティングは、長すぎるか、短すぎるか。どのアイディアも大惨事への近道。その後始末をするのが誰かによって結果も違ってくる。(そして、アイディアの発案者が解決のエンドゲームに関わることは稀)そういう多くの理由から、信頼はとても重要な通貨となった。そして、他人への信頼は僕の最大のチャレンジだったんだ。

僕らがリハーサルしていた小さな家から引っ越しを余儀なくされ近所に次のローリング・ストーンズがいるって気がつかなかった近隣の人たちに感謝さ僕らはみんなのコミットメントがどの程度なのか、バンドとクルー全員と話し合う必要があった。このバンド/ビジネスに真剣に関わる覚悟があるか?こういう会話はいつだって難しいんだ。まるで一生逃げられないことかのように話して、友達をびっくりさせたり、怖がらせたくなかったし、そういう根本的な質問をして、その人が離れていったり、関係にヒビが入るキッカケを作りたくなかったから。だから、引っ越しが必要であること、10分ごとに警察がノックしに来ることなくリハーサルができる場所を購入して、ちゃんとしたレーベル施設として展開し、バンドとしての活動の場を広げていきたいと打ち明けたとき、みんなすごく乗り気だったことを嬉しく思ったんだ。それはとてもシンプルで自然だった。そうじゃなくなるまでね。数名の友人は、手遅れになる前に辞めたよ。住宅ローンとか、共同生活とか、モントリオールから離れた場所に引っ越すことになるだろうって話したあとに。(モントリオール周辺は高すぎたんだ)こういう要因の積み重ねが、グループ内でも特に献身的だった人たちにさえ、別の野心を芽生させ、一緒に達成しようと約束したものは、心痛む別れとなった。彼らを責めることはできないよ。上手くいくなんて思う方が世間知らずだし、クレイジーだ。

ただ、残った人たちにとって、時に世間知らずとクレイジーさが、不可能を達成するために、自分の限界を越えるために、何かを生み出すために必要なものであると気付くまでに時間はかからなかった。まさに、それこそ僕らが経験したことさ。お互いをより近づけたよ。夢が明白になったんだ。遠くにぼんやりと望むような偽りではなくて、手で触れられるくらいリアルなものとなった。そして、それだけでも凄いことなのに、僕らは旧カトリック教会をその隣にある聖職者たちの家と一緒に購入することに決め、そこをスタジオ、オフィスにして、生活拠点にすることにした。ケベック州にあるほとんどの教会が売りに出されているか、廃墟となっていたから、購入はシンプルで無理なく済むだろうと思ったんだ。残りは想像できるよね:全く簡単じゃなかった。

場所を見つけるのは容易だった。購入したいと申し出るのもスムーズだった。けど、バンドが教会を購入するのを手助けする銀行がなかったことが、事態を興味深くさせたんだ。それと、僕らの購入オファーが宗教団体の様々な組織の人たちから承認されなきゃいけなかったこともね。それには6ヶ月しかかからなかったよ。僕らのクルーの親戚にハイランクの司教さんがいたとかで早く解決できたんだ。そこからはとんとん拍子に進んだけど、資金集めには苦労した。そのプロセスは、関わる人たち全員にとって、コミットメントとは何かを学ぶ機会となったよ。振り込み期日の前日、手数料分ほどのお金がまだ足りなかった。でも、そんな困難にも関わらず、僕らはなんとか支払うことができたんだ。ギリギリで力を貸してくれた友人に感謝!こうして、ようやく、僕らは誇らしい(そして疲れ切った)教会と聖職者たちの家の新しいオーナーとなったんだ。

その後の18カ月間は、自分たちで内部を修理することに献身したよ。この期間も、お互いをより近づけさせた。この時にはコミュニティとなっていた僕らが、みんなで一緒に達成したという気持ちが強まっていたんだ。その後の10年の中で、ここはユニークなレコーディングスタジオ、レコードレーベル、マルチメディア施設、グッズ製作所となった。僕らはアルバムを何枚か制作し、そのうち1枚は2015年のJuno賞ロックアルバム・オブ・ザ・イヤーの候補にもなった。他にもたくさんの創作作品を完成させ、友人として、家族として、ビジネスパートナーとして成長してきたんだ。バンドの6人はオリジナルメンバーのままであり、この純粋なマッドネスに最初に飛び込んだ人たちもほぼ変わっておらず、今では僕らのビジネスの様々な側面を管理してる。教会を買う時にサポートしてくれた人たち全員にも返済することができたよ

改めて、世間知らずとクレイジーさは遠くまで導いてくれる。ほんの少しでも、隣で一緒に歩いている人たちを信頼することができるならね。それが、短い時間でも、一生かのように長く感じる時間でも。なるべく早く自分のゴールにたどり着くことが、大事なことではなくなり、旅路の一歩一歩が本当にプライスレスなものになる。そのプロセスの各フェーズが、かつて自分が夢みたものや思い描いたものを定義・再定義する。けれど、何よりも大事なのは、仲間意識と親交が自分を変え続けるということ。

君が今、旅路のどの段階にいようとも、プロジェクトを一緒に分かち合う人たちこそ、それを特別なものやユニークなものにさせる。その力強い源が、必ずしも友達や、君が気にかけている人たちから来るとは限らない。それこそ、人生の最も素晴らしい要素なんだ。僕は、自分の仲間を見つけることによって、自分の目的を見つけると気付いた。誰もがサンドイッチを一口かじれて、毎日、眠れる床のスペースがあれば、残りはシンプルで自然なのさ信じて。

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