はじめプロジェクトは、レムリンによってインストゥルメンタルとして進められていました。歌を入れるというアイディアが持ち上がったとき、囁くことのみ可能だったフォスターですが、むしろ何度かコラボレーション経験もある(Your Favorite Enemies時代に遡る)Momokaを誘って、彼のプロジェクトの最初の声となってもらってはどうかという提案が出ました。それがのちに『Kimiyo』とタイトル付けられるアルバムになりますが、当初、彼女は自分がその中心となるとは思いもしませんでした。

“ずっとMomokaと一緒に何かやりたいとは思っていたんだ。彼女はとてもユニークな精神を持っていて、インスピレーションに溢れ、洞察力に富んだ人でね。人生、特に精神性について共通した視点を持っているけれど、何よりも、彼女は素晴らしいアーティストで、とても称賛している。スケッチした曲を僕自身が歌うのは難しいとはっきりした時、このプロジェクトの精神を伝えられるのはMomokaしかいないだろうと思った。Voyage à la Merの詩がプロジェクト全体を支える核だったけど、詩を彼女なりに意訳して、彼女の母国語で表現して欲しかったんだ。そうすれば、僕の声を代弁するでも、僕の言葉が伝えたかもしれない意味を真似る必要もなくなる。僕らはキャンバスをセットし、カラーパレットを開いたけど、彼女自身が筆を持ち、表現したんだ”とフォスター。

物語の中の物語として見なされた『Kimiyo』は複数のレイヤーを持つ作品へと開花しました。アルバムは2010年にフォスターが日本で出会った人たちの証にインスピレーションを受けており、『Kimiyo』のメインの物語は、出会ったあと数年経ってからフォスターがメッセージを通して知った、ある若い女性の人生の旅にフォーカスされています。彼女は人生を諦めようとしていたところ、自分が望まない妊娠をしていることを知りました。命を断つという考えも、新しい命を授かっているということも、自分の中で整理がつかず、大きくなっていくお腹の中にいる命を憎むようになりますが、赤ちゃんがお腹の中で動くのを感じ始めたときから、自分の現在と未来への希望が芽生え始めました。そして、これまでどこにもないと思っていた(特に自分の中には)生きる目的を見つけ、自分自身の人生を思い描くようになりました。しかし、流産によって子どもを失い、再び空虚感が訪れますが、この時は以前とは何かが違っていました。彼女は、幸せとは心と魂の尺度であり、目的を受け入れることは、自分の中から成長していくものだと学んだのです。しかし、木が森の美しい密度を隠す一方で、隠すには明るすぎる光もあることをフォスターは曝け出しました。

“プロジェクトに閃きを与えたものについて説明するのは、いつもあまり気が進まない。僕個人にとって、それが何を意味するかのヒントを与えることも深く躊躇する。本物の芸術は発展していくと信じているんだ。だからこそ、その起源も作品自体も成長できる。『Kimiyo』には、感情的な深みがあるから、その物語が悲劇的であるのと同じくらい、スタート地点が何だったか、みんなも知る必要があると思った。それは、変化や進化を恐れて探求したくない要素の表面だけを見るという僕らの傾向よりも、はるかに多くのものを表していると思う。僕にとって、人が想像し、触れられるのが『Kimiyo』である一方で、それは、孤独、現実逃避、否定の中から、自分自身、生きる目的や人生の軌跡を見つけることについてのメタファーでもある。アイデンティティを形成し、解放よりも絶対的なものを維持することや、平等にチャンスを与えるのではなく、一部の人たちのために利己的な商業化を生むようにできているこの世界における自由、独自性、重要性を求めるためでもある。たとえ、この舞台が日本でも、これは自分が何を表現したいか、というよりも主に、新しく立ち上がるために自分自身の何をさらけ出したいかを決めるユニバーサルなキャンバスなんだ。時に、自分が見る色や認識する色合いは、驚くほどに欺瞞的だったりするのさ…”

『Kimiyo』が独自の存在へと発展していったことで、Voyage à la Merは、フォスターがはじめに思い描いていたものより、ずっと幅広い感情のスコープへとゆっくりその表現世界を大きくしていきました。

リリース日

2024年4月26日

作曲

Alex Henry Foster
Ben Lemelin

作詞

Alex Henry Foster

Vo.

Momoka Tobari

プロデュース

Alex Henry Foster
Ben Lemelin

レーベル

Hopeful Tragedy Records